設計に使うデータを整える

分子設計 第 1 回 | 教科書 序章・第 1 章

第 1 話 依頼が届く

出発候補の何が不足し、どのデータが必要か

分子設計 第 1 回 設計に使うデータを整える

科目ガイダンス(1):この授業で学ぶこと

  • 一つの分子設計の依頼を 6 回かけて進め、データに基づいて判断する手順を学ぶ
  • データを多く集めるだけでは、正解は自動では出ない
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科目ガイダンス(2):授業の目的と到達目標

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科目ガイダンス(3):授業のスケジュール

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科目ガイダンス(4):毎回の進め方と評価

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分子をどう設計するか:3 つの進め方 教科書 序章

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データ駆動の例 1:抗菌薬の候補を探す 教科書 序章

片っ端から試すと

予測の上位を試すと

上位にあった分子


ハリシン:糖尿病の薬の候補だった分子
既存の抗菌薬と構造が似ていない

左と右は別の分子の集まり。出典:Stokes ほか, Cell 180, 688(2020)

要点:予測の上位は約半分が当たった(片っ端からでは 5 %)。新しい候補も見つかった

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データ駆動の例 2:有機 EL の発光分子を探す 教科書 序章

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ケモインフォマティクスとは:分子をデータとして扱う 教科書 序章

ケモインフォマティクス:分子の構造や物性などの化学の情報をデータとして集め、
計算機で表し、比べ、予測して、分子や実験の設計に使う分野

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依頼の背景:部品を洗う工程 教科書 序章

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今回の依頼:溶媒の候補を改良する 教科書 序章

依頼メモ 工程担当者より「洗ったあと水ですすぎたいが、1-ペンタノールは水に溶けにくく、残りやすい」

候補は C5〜C6 の一級・二級アルコール。第 6 回に報告する

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問い 1出発候補の何が不足し、どのデータが必要か

工程担当者「1-ペンタノールの、どこが足りないの? 代わりを探すには、何を調べる?」

予想 目標に近づけるなら、構造のどこを変えるか

  1. 鎖の長さ
  2. OH の位置
  3. 枝分かれ

正しさは問わない。今の直感で

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今日の流れ 教科書 序章・§1.1〜1.6

  1. 問い 1 ①目標と比べると、どれだけ足りないか → 例題・やってみる
  2. 問い 1 ②構造を変えると、物性はどう変化しそうか → 基本演習 A
  3. 問い 1 ③資料の記録は、目標と比べられるか → 例題・基本演習 B

そのあと:理解確認 → 応用演習(どの候補分子の、どのデータを集めるか)→ 問い 1 の答え

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例題:目標を満たすかを判定する 教科書 序章

問い 1 ①目標と比べると、どれだけ足りないか

架空の物質 G
沸点 147 ℃、 5.2

解き方

① 沸点範囲:両側と比べる
140 を 7 超える

② 下限:片側と比べる
5.2 ≧ 4.0

沸点は満たさない
は満たす

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やってみる:1-ペンタノールは目標を満たすか

問い 1 ①目標と比べると、どれだけ足りないか

1-ペンタノール
沸点 138 ℃、 2.19

  1. 沸点は目標を
  2. は目標を
  3. 満たさない方は、いくつ足りないか
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答え:足りないのは水溶性

やってみる 目標を満たすか

① 沸点138 は範囲の内側
上限まで 2 ℃

② 2.19 < 4.0
差は 1.81

沸点は満たす
不足は水溶性(1.81)

要点:範囲は両側、下限は片側で判定する

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構造のどこに着目するか 教科書 §1.2

問い 1 ②構造を変えると、物性はどう変化しそうか

仮説の書き方:〔どこ〕を変えると、〔どの力〕が変わり、〔どの物性〕は〔上がり/下がり〕そう

例:OH を OCH₃ にする(エーテル。依頼の条件の外)→ 水素結合の H が無くなる → 沸点は下がりそう

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基本演習 A:4 分子で確かめる

問い 1 ②構造を変えると、物性はどう変化しそうか

手元の値は、依頼に添えて届いた 4 分子のカードだけ。次のスライドのアプリで、炭素数と沸点の関係を確かめる

手順 1予想のボタンを押す

手順 2カードを押して点を打つ

手順 3確かめられた文を選ぶ

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基本演習 A:予想を押して、カードを押す

エタノール (2, 78)、1-ブタノール (4, 117)、1-ペンタノール (5, 138)、1-ヘキサノール (6, 157)。残りの 3 点を書き込む。確かめられた文はどれか:この 4 例では、炭素数が多いほど沸点が高い/枝分かれしても、炭素数が多いほど沸点が高い/水溶性も、炭素数と同じ向きに変わる

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基本演習 A の答え

基本演習 A 確かめられた文はどれか

① 読む点は右上がり(78 → 117 → 138 → 157 ℃)
考えられる理由:鎖が長いほど、分子間の分散力が大きい(くわしくは第 4 回)

② 範囲4 分子はどれも直鎖一級。枝分かれと水溶性は確かめていない

この 4 例では、炭素数が多いほど沸点が高い(観察)

要点:観察は確かめた範囲まで。まだ確かめていないことは仮説

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候補分子を比べるには、どんな表が必要か 教科書 §1.1

問い 1 ③資料の記録は、目標と比べられるか

目的変数
予測したい物性の列

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同じ「溶解度」でも、そのまま比べてよいか 教科書 §1.3

問い 1 ③資料の記録は、目標と比べられるか

目標と照らし合わせる 4 点:温度・相・溶質・分母

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例題:記録を 3 つに分類する

問い 1 ③資料の記録は、目標と比べられるか

記録 R1・R4(架空の物質 X)を 3 つに分類する

解き方

① R14 点とも同じ
→ ②「同じ」

② R4相と溶質が違う
→ ③「言えない」

R1 はそのまま比較できる
R4 は現状では判断できない

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基本演習 B:記録を分類する

問い 1 ③資料の記録は、目標と比べられるか

次のスライドのアプリで、R5(値が空欄)→ R2 → R6 の順に

手順 1目標の行と 1 列ずつ見比べ、違う所を探す

手順 23 つの問いで分類を決める:値はあるか → 4 点は同じか → この値に情報を足して直せるか

手順 3R2・R6 は、比べるのに必要な情報を書く

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基本演習 B:カードを押して、分類を押す

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基本演習 B の答え(1)

R5 値が空欄。どの分類に入るか

考え方空欄は、測っていないか値が分からないという意味。0 ではない
0 として平均すると、値が小さく出る

現状では判断できない(保留する)

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基本演習 B の答え(2)

R2・R6 分類と、比べるのに必要な情報

① R230 ℃ → 25 ℃ の値か、温度による変わり方。「3.8 < 4.0 で満たさない」は ×

② R6分母 100 mL → 飽和溶液の密度。「4.2 で満たす」は ×(100 mL ≠ 100 g)

2 つとも、換算や追加確認が必要

要点:比べる前に、温度・相・溶質・分母をそろえる。欠測は 0 にしない

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理解確認(個人・3 分)

目標:25 ℃・水相・g アルコール/100 g 飽和溶液。架空の物質 Y の記録 P・Q(下の表)

  1. 目標と直接比べられるのは、P と Q のどちらか
  2. Y の の記録(同じ条件)が別に 3 つあり、平均を出したい。うち 1 つが空欄。0 として平均に入れてよいか
    理由を 1 文で
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理解確認の答え

問 1 目標と直接比べられるのは、P と Q のどちらか

考え方Q は 35 ℃ で温度が違う。P は 4 点とも目標と同じ

よくある誤りQ の 3.7 を使い、Y は「4.0 に届かない」と判定する(25 ℃ の P は 4.1)

P

問 2 空欄を 0 として平均に入れてよいか

考え方空欄は、測っていないか値が分からないという意味。
測って 0 だったこととは違う

よくある誤り「平均が下がるから」だけでは理由が足りない(それは結果)。
理由は、測って 0 だったのではないこと

入れてはいけない

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応用演習:候補分子を 1 つ選ぶ

問い 1どの候補分子を調べるか

手順 1候補分子を 1 つ選ぶ(下の 4 つのほか、自分の候補分子でもよい)
依頼の条件:C5〜C6 の一級・二級

手順 21 文で:〔どこ〕を変えると〔どの力〕が変わり、 は〔上/下〕がりそう
着目点:鎖の長さ・OH の位置・枝分かれ。 は、水となじむ OH と、なじみにくい鎖のかねあい。向きは自分の予想でよい

手順 3沸点についても 1 文(時間があれば)

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応用演習:必要なデータを挙げる

問い 1どのデータを集めるか

  1. 目標と比べるには、何が必要か
    どの分子の、どの物性を、どの条件で
  2. 直鎖一級の 4 分子だけで、その候補分子がよいと言えるか
  3. 理由を一言
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応用演習の答え(1)

候補分子を 1 つ選ぶ 1-ペンタノールの構造をどう変えるか

候補分子の例2-ペンタノール。理由(仮説):OH の位置で、水との水素結合が変わりそう
向きは自分の予想でよい(第 6 回に確かめる)

外れる例1-ヘキサノール:沸点 157 ℃ で上限を超える(基本演習 A のカードの値)

成立しない例「炭素数を 3 にする」:C5〜C6 の外

よい答えの 3 条件:依頼の条件に合う/4 分子の値で外れない/理由(仮説)がある

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応用演習の答え(2)

必要なデータ 候補分子を目標と比べるには

① 物性 と沸点(構造を変えると、沸点も変わりうる)

② 測る条件25 ℃・水相・飽和溶液 100 g あたり

候補分子の (条件つき)と沸点

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応用演習の答え(3)

4 分子で言えるか 4 分子だけで、その候補がよいと言えるか

考え方4 分子は直鎖一級だけで、 の値は 1-ペンタノールだけ。
OH の位置や枝分かれが違う = 5 の分子は、値がない

成立しない例「この候補は が 4.0 以上になる」:確かめていない値を結論にしている

言えない。候補分子は仮説として書く

= 5 の「?」は上から 2-ペンタノール・3-ペンタノール・2-メチル-1-ブタノール・3-メチル-1-ブタノール

要点:候補分子は仮説。確かめるデータは、物性と条件まで書く

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問い 1 の答え不足は水溶性。必要なのは、候補分子の と沸点

問い 1:出発候補の何が不足し、どのデータが必要か

  • 沸点 138 ℃ は範囲内。 2.19 は 4.0 に 1.81 足りない
  • 必要なデータ:
    候補分子の と沸点
    は 25 ℃・水相・
    飽和溶液 100 g あたりの値
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実際のケモインフォでは:データを集めて、そろえる

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自分の実験では、何をそろえて比べるか

問い 記録 2 の方が収率(伝導度)が高い。記録 2 の条件の方がよいと言えるか

言えない。求め方(調製・試料・測定)がそろっていない → 追加確認が必要

自分の研究(まだなら学生実験)で記録しておくべき条件を 1 つ考えておく(宿題でよい)

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まとめ:今日できるようになったこと

今日できるようになったこと(到達目標 ①)

  1. 要求値を範囲と下限で判定し、不足を数で言える
    1-ペンタノール: が 1.81 足りない
  2. 記録の温度・相・溶質・分母を目標と照らし合わせ、3 つに分類する。欠測は 0 にしない
  3. 観察は確かめた範囲まで、候補は仮説として書く

まだ分からないこと

  • 構造の違い(OH の位置・枝分かれ)を、どう表して比べるか → 第 2 回
  • 候補分子の値
    沸点:第 3〜4 回に予測、
    第 5 回に資料値と照らし合わせる
    水溶性:第 6 回に資料値で確かめる
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次回予告:第 2 回 分子構造を数値で表す 教科書 第 2 章

第 2 話 候補を数で並べる

工程担当者「候補の分子がいくつもあるね。比べられる形にしてくれる?」

次回の問い:分子のどの特徴を、表の列にするか

  • まだ分からないこと:構造の違いを、どう表して比べるか
  • 沸点:第 3〜4 回に予測 → 第 5 回に資料値と照らし合わせる。水溶性:予測せず、第 6 回に資料値で確かめる

今日の復習 小テスト第 1 回(manaba)・基本演習を解き直す 教科書で読む 序章・§1.1〜1.6 次回の予習 §2.1〜2.2

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発展:時間があれば・自習用

  1. 体積あたりの値を、質量あたりに直すには
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体積あたりの値を、質量あたりに直すには 教科書 §1.3 の発展

溶液 100 mL あたり g のアルコール、溶液の密度 g/mL

溶液 100 mL 中のアルコールの g  同じ温度の飽和溶液の密度(g/mL)

  • 100 mL の溶液の質量は g
  • は、その温度の飽和溶液の値を使う。水や純アルコールの密度では代えない
  • 計算の例:、 なら 2.0 / 0.98 = 2.04(どちらも仮の値)
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