似た分子から物性を予測する

分子設計 第 3 回 | 教科書 第 3 章

第 3 話 似た分子から見積もる

「似ている」をどう定義すると、予測がどう変わるか

分子設計 第 3 回 似た分子から物性を予測する

これまでの経過

依頼沸点 115〜140 ℃| 4.0 以上|C5〜C6 の一級・二級

前回の確認2-メチル-1-ブタノール(HOCH2CH(CH3)CH2CH3)の は

:OH の付いた炭素が二級なら 1、一級なら 0

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問い 1「似ている」をどう定義すると、予測がどう変わるか

工程担当者「構造を変えると、沸点も範囲から外れないか心配。
資料が届く前に、2-ペンタノールの沸点を見積もれる?」

やってみる どの分子の値を使いたいか、1 つ選ぶ 着目点:炭素数、OH の炭素の級、分岐

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今日の流れ 教科書 §3.1〜3.6

  1. 問い 1 ①「似ている」を、どう数にするか → 例題・基本演習 A
  2. 問い 1 ②重みを変えると、予測はどう変わるか → 例題・基本演習 B
  3. 問い 1 ②どの予測を採用するか → 応用演習

そのあと:問い 1 の答え → 実際のケモインフォでは → 自分の実験では

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似た分子の値を使う:最近傍による予測 教科書 §3.1

問い 1 ①「似ている」を、どう数にするか

  • 距離:記述子の違いから決める、似ていなさの数。小さいほど似ている
  • 最近傍:距離が最も小さい参照分子。その値を予測値にする
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構造の違いを、どう距離にするか 教科書 §3.2・§3.3

問い 1 ①「似ている」を、どう数にするか

重み:違い 1 つを、距離いくつと数えるか( の 2 は仮の値。② で変える)

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例題:2-プロパノールの最近傍

問い 1 ①距離をどう計算するか

2-プロパノール の沸点を、 の重み 2 の距離で予測してください。参照分子:
1-ペンタノール ・2-ブタノール ・2-メチル-1-プロパノール

解き方

① 1-ペンタノール

 

② 2-ブタノール

③ 2-メチル-1-プロパノール

最近傍は 2-ブタノール(距離 1)。予測 100 ℃

予測したい分子 2-プロパノール

参照分子 ① 1-ペンタノール

参照分子 ① 1-ペンタノール

参照分子 ② 2-ブタノール

参照分子 ③ 2-メチル-1-プロパノール

最近傍は 2-ブタノール → 沸点を使う

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基本演習 A: の重み 2 で予測する

問い 1 ①距離をどう計算するか

2-ペンタノール  

手順 11-ペンタノールまでの を手で:違いを ・・ の順に → に 2 → 足す

手順 2最近傍を予想してから、アプリで残り 2 つを確かめる

手順 3最近傍の値から、予測値を読む

問炭素数だけの予測(138 ℃)から変わったのは、何の違いを重く見たからか

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基本演習 A:残り 2 つをアプリで

最近傍を 1 つ押して予想 →「距離を計算」

で 3 つの参照分子までの距離を求め、最近傍の沸点を予測値にする

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基本演習 A の答え(1)

手順 1 1-ペンタノールまでの距離

① 違い:0、:1、:0

② 足す

手順 2・3 最近傍と予測

考え方距離:1-ペンタノール 2、
2-ブタノール 1、
2-メチル-1-プロパノール 4

最近傍は 2-ブタノール。予測 100 ℃

2-ペンタノールと 1-ペンタノール

違いを、式の記号に入れる

絶対値を外し、重みを掛けて足す

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基本演習 A の答え(2)

問 炭素数だけの予測(138 ℃)から変わった理由

考え方炭素数だけでは 1-ペンタノールが距離 0。
の違いを距離に入れ、重み 2 で炭素 1 個の違いより重く数えた

OH の炭素の級()の違いを、重く見るようになったから

要点:「似ている」の決め方を変えると、最近傍も予測も変わる(138 → 100 ℃)

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同じ距離になったら、どうするか 教科書 §3.4

問い 1 ②同じ距離になったら、どうするか

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例題:同じ距離の最近傍が 2 つあるとき

問い 1 ②同じ距離になったら、どうするか

1-ブタノール の沸点を、(1) 1-ペンタノール ・(2) 2-ブタノール ・(3) 2-メチル-1-プロパノール から、 の重み 2 で予測してください

解き方

① 距離(1) 1 (2)  (3) 1

② 最近傍(1) 1-ペンタノールと
(3) 2-メチル-1-プロパノール

③ 平均

予測 123 ℃(同じ距離の 2 つを平均)

要点:同じ距離の最近傍は、すべての値を平均する

参照分子の組 と沸点 / ℃

予測したい分子 (4, 0, 0) からの距離

距離 1 が 2 つ(同じ距離の最近傍)

同じ距離の最近傍は、沸点を平均する

予測 123 ℃

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基本演習 B: の重み 1 で予測する

問い 1 ②重みを変えると、予測はどう変わるか

2-ペンタノール  

手順 13 つの参照分子までの距離を手で求める

手順 2最小が 2 つあれば、平均して予測値を出す

手順 3次のスライドのアプリで確かめる

問 1重み 2 の予測(100 ℃)と比べて、予測は

問 23 つの予測のどれが正しいかを、今の情報で

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基本演習 B:アプリで確かめる

手で解いたら、最近傍を 1 つ押して「距離を計算」。同じ距離のときの予測値を確かめる

の重みを 1 にして 3 つの距離を求める。同じ距離の最近傍は、すべての沸点を平均する

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基本演習 B の答え(1)

手順 1・2  の重み 1 の最近傍と予測

① 距離1-ペンタノール 1、2-ブタノール 1、2-メチル-1-プロパノール 3

② 平均同じ距離の 2 つ:

予測 119 ℃

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基本演習 B の答え(2)

問 1 重み 2 の予測と比べて

考え方100 ℃ → 119 ℃。重みを変えただけで、最近傍と予測が変わる

変わる

問 2 3 つの予測のどれが正しいか、今の情報で決められるか

考え方2-ペンタノールの資料値をまだ見ていない。3 つとも、決め方から出た予測

決められない

要点:同じ距離なら平均する。予測の違いは、決め方の違いから出ている

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理解確認(個人・3 分)

、予測したい分子は

  • 参照分子 U:、沸点 90 ℃  参照分子 V:、沸点 110 ℃(架空)
  1. U・V までの距離を求め、最近傍の値を使った予測を示す
  2. 「最近傍が選べたので、この予測値は正しい」と言えるか
    理由を 1 文で

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理解確認の答え

問 1 U・V までの距離と予測

考え方U:、V:

最近傍は U。予測 90 ℃(架空の値)

問 2 「最近傍が選べたので、この予測値は正しい」と言えるか

考え方距離は構造の近さの決め方で、沸点の一致は保証しない

よくある誤り「計算ミスかもしれない」だけでは理由にならない(計算が正しくても言えない)

言えない

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応用演習 1:重みを少しずつ変える

問い 1 ②重みを少し変えると、どうなるか

の重みを とする。距離は下の横棒のとおり

手順 1 で、最近傍と予測値を出す

手順 2 で、最近傍と予測値を出す

問重みを少しずつ変えると、予測は

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応用演習 1 の答え

問 重みを少しずつ変えると

考え方・ の重みは 1 のまま。距離は 1-ペンタノール 、2-ブタノール 1。
が 1 より小さいと 1-ペンタノール、大きいと 2-ブタノールが最近傍

急に変わる(0.9 で 138 ℃、1.1 で 100 ℃。119 ℃ は重み 1 のときだけ)

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応用演習 2:依頼人に答える

問い 1 ②どの予測を採用するか

手順 1表の空いている 2 列を埋める

手順 2答え:〔どの予測〕を採用する。〔何の違い〕を見た。未確認は〔何か〕

範囲は 115〜140 ℃。正しさではなく、何の違いを見るかで選ぶ。「決めない」でもよい

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応用演習 2 の答え(1)

表 何の違いを見たかと、範囲に入るか

決め方で、範囲に入るかまで変わる

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応用演習 2 の答え(2)

答え いまの時点で、どの予測を採用するか

成立する例138 ℃:炭素数の違いが沸点に最も影響すると見た

成立する例100 ℃:級の違いを、炭素 1 個の違いより重く見た

成立する例119 ℃:炭素数の違いと級の違いを、同じ重みで見た

成立する例決めない:3 つとも決め方から出た予測。資料値で確かめてから選ぶ

成立しない例「真ん中の予測だから正しい」「この重みが最良の重み」:
確かめていないことを結論にしている

理由と、未確認のこと(2-ペンタノールの資料値)が書けていれば成立する

要点:予測は決め方しだいで変わる。どれがよいかは、確かめるまで言わない

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問い 1 の答え記述子と重みの決め方で、最近傍も予測値も変わる

問い 1:「似ている」をどう定義すると、予測がどう変わるか

  • 「似ている」=記述子の違いから決めた距離。最近傍の値を使い、同じ距離なら平均
  • どれを採用しても、範囲に入るかは資料値で確かめるまで分からない(第 5 回)
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実際のケモインフォでは:似た分子を探し、その値を使う

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自分の実験では、何を似ているとするか

  • 既知の結果を参照するときは、何を似ているとしたか、何が違うかを書いておく
  • 自分の研究(まだなら学生実験)で参照している既知の例を 1 つ挙げ、
    似ている点と違う点を考えておく(宿題でよい)
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まとめ:今日できるようになったこと

今日できるようになったこと(到達目標 ③)

  1. 記述子の違いから距離を計算し、
    最近傍の値を使って予測できる
    同じ距離の最近傍は、すべての値を平均する
  2. 重み(何の違いを重く見るか)を変えると、
    最近傍も予測も変わることを示せる
    2-ペンタノール:炭素数だけ 138 ℃、
    重み 2 で 100 ℃、重み 1 で 119 ℃
  3. 重みを少し変えると、最近傍が入れ替わり、
    予測が急に変わることを説明できる。
    最近傍が選べても、予測が正しいとは言えない

まだ分からないこと

  • 似た分子を選ぶ代わりに、
    構造と沸点の傾向を式にできるか
    → 第 4 回
  • 3 つの予測のどれが資料値に近いか
    第 5 回に資料値と照らし合わせる
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次回予告:第 4 回 データから予測式を作る 教科書 第 4 章

第 4 話 式にまとめ、予測を封印する

工程担当者「使う分子しだいで答えが変わるのは困る。式で言える?」

:沸点、:炭素数。丸:直鎖一級 4 分子
四角:二級・分岐 3 分子(2-プロパノールは 83 ℃)

次回の問い:構造と沸点の傾向を、
簡単な式にまとめられるか

今日の復習 小テスト第 3 回(manaba) 教科書で読む 第 3 章(§3.2 の発展は読むだけ) 予習 §4.1〜4.2

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