予測を確かめ、信用できる範囲を考える

分子設計 第 5 回 | 教科書 第 5 章

第 5 話 封を開ける

予測がよくなったことと、信用できることはどう確かめるか

分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

これまでの経過

M0(炭素数だけの式)|M1(補正式)
依頼:沸点 115〜140 ℃| 4.0 以上|C5〜C6 の一級・二級

前回の確認1  は 2-メチル-1-プロパノール 1 分子にぴったり合わせた(108 ℃)。その分子で誤差 0 になったことだけで、未知の分子への予測がよいと言えるか

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

問い 1予測がよくなったことと、
信用できることはどう確かめるか

工程担当者「資料が届いたよ。その予測、本当に信じていいの?」

式にも参照分子にも使っていない 5 分子で確かめる

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

今日の流れ 教科書 §5.1〜5.7

  1. 問い 1 ①予測がよくなったことを、どう確かめるか → 例題・基本演習 A・B・C
  2. 問い 1 ②その予測を、どこまで信用できるか → 例題・応用演習 1・2

そのあと:問い 1 の答え → 実際のケモインフォでは → 自分の実験では

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

当てはまりと、予測を分ける 教科書 §5.1

問い 1 ①どのデータで確かめるか

  • 当てはまり:式や参照分子を決めるときに使ったデータに、予測が合うこと
  • 予測の確認:使っていないデータで、予測を記録してから資料値と比べること
教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

基本演習 A:予測を記録する

問い 1 ①確かめる前に、何をするか

M0:  M1:

手順 11-プロパノールの M0・M1 の予測を手で求める

手順 2残りの空欄も求める

手順 3アプリで自分の値と照らし合わせ、「予測を記録する」を押す

問M1 の予測が同じになった分子の組は、 がどうなっているか

分子 M0 M1
1-プロパノール (3, 0, 0)
2-ペンタノール (5, 1, 0) 121
2-メチル-1-ブタノール (5, 0, 1)
3-メチル-1-ブタノール (5, 0, 1) 128
3-ペンタノール (5, 1, 0)

121・128:前回封をした記録。単位は ℃

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

基本演習 A:アプリで記録する

空欄に M0・M1 の予測を書き込む

終わったら:前の枚の問へ

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

基本演習 A の答え

記録した予測(M0、M1)

① 1-プロパノール98、98 ℃

② 2-ペンタノール138、121 ℃

③ 2-メチル-1-ブタノール138、128 ℃

④ 3-メチル-1-ブタノール138、128 ℃

⑤ 3-ペンタノール138、121 ℃

M1 の予測が同じ組は、 が同じ

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

封を開ける

問い 1 ①1 分子の一致で、決めてよいか

2-ペンタノール。白抜き:封をした予測 青:資料値

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

予測のずれを、1 つの数にまとめる:MAE 教科書 §5.2

問い 1 ①複数の分子のずれを、どうまとめるか

分子の数  分子ごとの残差(資料値 − 予測値。第 4 回)  絶対誤差

まとめ方の練習(M0 と直鎖一級 4 分子)。分子が違う MAE とは比べない

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

例題:係数を決めた 3 分子の MAE

問い 1 ①複数の分子のずれを、どうまとめるか

M1 の予測は 2-プロパノール 81 ℃、2-ブタノール 101 ℃、2-メチル-1-プロパノール 108 ℃。資料値は 83・100・108 ℃。MAE を求めてください

解き方

① 絶対誤差

② 平均 ℃

③ 読む係数を決めた 3 分子なので当てはまり

MAE = 1.0 ℃(当てはまりの MAE)

資料値 − 予測値(3 分子)

絶対値:ずれの大きさだけ(符号は捨てる)

足して、分子数 3 で割る

係数を決めた 3 分子 → 当てはまりの MAE

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

基本演習 B:M0 と M1 を MAE で比べる

問い 1 ①予測はよくなったか

手順 12-ペンタノール(資料値 119、M0 138、M1 121 ℃)の絶対誤差を手で求める

手順 2予想:使っていない 5 分子の M1 の MAE は、係数を決めた 3 分子の 1.0 ℃(例題)より

手順 3アプリで資料値を表示し、M1 の MAE を手で求める

手順 4アプリで「絶対誤差と MAE を表示」を押し、M0 と比べる

問M0 → M1 で MAE は

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

基本演習 B:アプリで確かめる

M0・M1 と資料値の列から、絶対誤差と MAE を求める

終わったら:前の枚の問へ

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

基本演習 B の答え(1)

手順 1 2-ペンタノールの絶対誤差

考え方資料値 119 ℃。M0:、M1:

M0 は 19 ℃、M1 は 2 ℃

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

基本演習 B の答え(2)

手順 2・3、問 5 分子の MAE

① M0絶対誤差の和 58 ℃。 ℃

② M1絶対誤差の和 12 ℃。 ℃(例題の 1.0 ℃ より大きい)

小さくなった

要点:記録してから確かめた。この 5 分子では、M1 は M0 より予測がよい

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

基本演習 C:最近傍とも比べる

問い 1 ①1 分子の一致で、決めてよいか

2-ペンタノール:資料値 119 ℃。最近傍の予測は炭素数だけ 138、 の重み で 100、 で 119 ℃(第 3 回)

手順 13 つの絶対誤差を手で求める(M1 は 2 ℃)

手順 2アプリで 5 分子の MAE を確かめる

問 は 2-ペンタノールで誤差 0。5 分子の MAE が最小の方法は

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

基本演習 C:アプリで確かめる

最近傍(参照分子 3 つ)の 5 分子の予測。第 3 回と同じ手順で距離から求めた。MAE は答えの枚に

終わったら:前の枚の問へ

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

基本演習 C の答え

5 分子の MAE が最も小さい方法は

① 2-ペンタノール炭素数だけ 19、 で 19、 で 0 ℃(M1 は 2 ℃)

② 5 分子の MAE炭素数だけ 12.8、 で 15.0、 で 7.1、M1 2.4 ℃

この 5 分子では M1

要点:1 分子の一致では決められない。方法どうしは同じ分子で比べる

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

MAE 2.4 ℃ から、何が言えるか 教科書 §5.2

問い 1 ②その予測を、どこまで信用できるか:MAE は誤差の上限か

  • MAE は平均。「どの分子も 2.4 ℃ 以内」とは読めない(4 ℃・5 ℃ の分子がある)
教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

見たデータでは確かめられない:データ漏洩 教科書 §5.3

問い 1 ②資料値を見て直したら、どうなるか

  • データ漏洩:確かめるためのデータを見て、式や重み、係数を決めたり直したりすること。
    確かめたつもりの成績が、実際より良く見える
教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

同じ記述子なのに、沸点が違う 教科書 §5.4

問い 1 ②係数を変えれば、両方に合わせられるか

2-ペンタノールと 3-ペンタノールは同じ (5, 1, 0)。係数を変えれば、2 つとも誤差 0 にできるか

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

どこまで使ってよいか:適用範囲 教科書 §5.5

問い 1 ②式に入れられれば、信用できるか

  • 適用範囲:資料値のある分子(式を決めた分子と、確かめた分子)が覆う範囲。列ごとの範囲と、組み合わせの両方を見る
教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

理解確認(個人・3 分)

MAE=絶対誤差の平均。予測 100・102 ℃、資料値はどちらも 100 ℃(架空)

  1. 絶対誤差 2 つと MAE を求める
  2. 個々の誤差は、すべて MAE 以下か
  3. 資料値を見て係数を変えた。変えた後の予測のよさは、何のデータで確かめるか

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

理解確認の答え

問 1・2 絶対誤差と MAE。個々の誤差は、すべて MAE 以下か

考え方、。MAE = ℃

1:0・2 ℃、MAE 1 ℃ 2:そうではない(2 ℃ の分子は MAE より大きい)

問 3 係数を変えた後のよさは、何のデータで確かめるか

よくある答え「同じデータでもう一度」は ×(データ漏洩)。
「もっと多くのデータで」は、係数を直すのに使っていなければ ○

係数を直すのに使っていない、別のデータ

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

例題:主張の言える範囲を確かめる

問い 1 ②主張をどう確かめるか

「5 分子のどれでも、M1 は M0 より誤差が小さかった」と言えるか。右の図から判定してください

解き方

① 範囲主張は「どれでも」
→ 5 行すべてを見る

② 確かめる1-プロパノールは、
M0・M1 とも誤差 1 ℃(同じ)

③ 直す「この 5 分子のどれでも、M1 の誤差は M0 以下」なら言える

言えない(1 分子は同じ)。言い方を「以下」に直せば言える

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

応用演習 1:結果から言えること

問い 1 ②主張をどう確かめるか

5 分子の M1 の絶対誤差:1・2・0・4・5 ℃(MAE 2.4 ℃。M0 の MAE は 11.6 ℃)

手順 1主張が何のデータ、どの範囲の話かに印をつける(「この 5 分子」「必ず」など)

手順 2根拠を確かめ、言える/言えないを選ぶ。理由を 1 行で

手順 3主張 2 は、言える文に直す

主張 1 「この 5 分子では、M1 は M0 より予測がよかった」

主張 2 「新しい分子でも、M1 なら必ず ±2.4 ℃ 以内に入る」

主張 3 「今日の 5 分子の資料値を見て係数を直しても、同じ 5 分子でよさを確かめられる」

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

応用演習 1 の答え(1)

主張 1 この 5 分子では、M1 は M0 より予測がよかった

根拠使っていない 5 分子で、記録してから確かめた。MAE 11.6 → 2.4 ℃

言える(「この 5 分子では」の範囲で)

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

応用演習 1 の答え(2)

主張 2 新しい分子でも、M1 なら必ず ±2.4 ℃ 以内

考え方MAE は平均で、上限ではない

直した文「この 5 分子では、M1 の絶対誤差は平均 2.4 ℃、最大 5 ℃ だった」

言えない

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

応用演習 1 の答え(3)

主張 3 資料値を見て係数を直した後も、同じ 5 分子で確かめられる

考え方直した時点で、5 分子は係数を直すのに使ったデータ

言えない。別の使っていないデータで確かめる

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

応用演習 2:組み合わせと係数の数

問い 1 ②主張をどう確かめるか

資料値のある分子: = 2〜6、 は (0, 0)、(1, 0)、(0, 1) だけ

手順 1主張が何のデータ、どの範囲の話かに印をつける

手順 2根拠を確かめ、言える/言えないを選ぶ。理由を 1 行で

手順 3主張 4 は、言える文に直す

主張 4 「・・ がそれぞれ確かめた範囲なら、(6, 1, 1) の予測も確かめたことになる」

主張 5 「分子ごとに別の補正係数を付ければ、第 4 回までの 7 分子(直鎖一級 4+二級・分岐 3)の SSE は 0 にできる。だから予測もよくなる」

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

応用演習 2 の答え(1)

主張 4 各列が範囲内なら、(6, 1, 1) も確かめたことになる

考え方資料値のある分子に、二級+分岐の組み合わせは 1 つもない

直した文「(6, 1, 1) は式で値は出るが、二級+分岐の組み合わせは確かめていない」

言えない。式に入れられることと、信用できることは別

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

応用演習 2 の答え(2)

主張 5 分子ごとに係数を付ければ SSE は 0。だから予測もよくなる

考え方使ったデータに合わせすぎた式(過学習)。どの資料値も再現できるが、新しい分子にどの係数を使うか決まらない

言えない。当てはまりが完全でも、予測がよいとは限らない

要点:言えるのは確かめた範囲まで。
平均は上限でなく、見たデータも合わせすぎも、予測のよさを示さない

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

問い 1 の答え使っていないデータで確かめ、言える範囲を限る

問い 1:予測がよくなったことと、信用できることはどう確かめるか

使っていない 5 分子の MAE(灰:係数を決めた 3 分子)

2-ペンタノールの 4 つの予測と資料値

  • よくなった:記録してから、使っていない 5 分子で MAE 11.6 → 2.4 ℃
  • 言える範囲:この 5 分子の平均で、上限ではない。 の組み合わせは未確認
教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

実際のケモインフォでは:使っていないデータで確かめる

  • 第 1 回の抗菌薬の例でも、学習に使っていない分子で確かめた。予測の上位 99 分子のうち 51 個、下位 63 分子のうち 2 個が、実際に効いた
教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

自分の実験では、何で確かめたか

  • 「うまくいった」と書く前に、決めるのに使ったデータか、別のデータかを書いておく

自分の研究(まだなら学生実験)で、条件を決めた実験と確かめた実験が同じものを探しておく(宿題でよい)

教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

まとめ:今日できるようになったこと

今日できるようになったこと

  1. 記録してから、使っていない分子で確かめ、MAE で比べられる
    この 5 分子:M0 11.6 ℃ → M1 2.4 ℃
  2. MAE は平均で上限ではなく、見て直した式(データ漏洩)や合わせすぎた式(過学習)は同じデータでよさを示せないと言える
  3. 同じ記述子の異性体は区別できず、資料値のある組み合わせの外(適用範囲の外)は信用しにくいと言える

まだ分からないこと

  • 確かめていない組み合わせの
    候補を、どう扱うか → 第 6 回
  • 水溶性も見て、どれを選び、
    次に何を測るか → 第 6 回
教科書 第 5 章
分子設計 第 5 回 予測を確かめ、信用できる範囲を考える

次回予告:第 6 回 分子候補と次の実験を提案する

第 6 話 報告する

工程担当者「で、どれを使えばいい? 次に何を測る?」

次回の問い:複数の要求と未確認事項を踏まえ、次に何を確かめるか

今日の復習 小テスト第 5 回(manaba)・基本演習を解き直す 教科書で読む §5.1〜5.7
次回 第 1 回の応用演習の答えを持参 予習 §6.1〜6.2

教科書 第 5 章