分子集団とエントロピー

有機量子化学特論 第 02 回 | 教科書 第 2 章

最安定構造だけを見ればよいか

有機量子化学特論 第 02 回 分子集団とエントロピー

前回の復習

1 前回の問い「安定であることと、変化しにくいことは同じか」:存在比と速さは、それぞれ図のどこで決まりましたか

2 極小のエネルギーが高くても、ポテンシャルの幅が広い配座が高温で多くなるのはなぜでしたか。 で説明してください

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問い 1最安定構造だけを見ればよいか

ブタンの三つの配座。gauche は 2 つある

anti の は、gauche 1 つより kJ/mol 低い

予想 298 K で分子 100 個のうち、gauche は 2 つ合わせていくつありますか

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今日の流れ 教科書 §2.1〜2.9

問い 1最安定構造だけを見ればよいか

  1. 数える:100 個のうち、gauche はいくつあるか → 例題
  2. 形(配座)を 1 つに決めると、その形はどれだけ少なくなるか → 演習 A
  3. 結合できる形をそろえると、どれだけ強く結合するか → 演習 B

今日の数値は、説明のために選んだ値(研究の実例を除く)

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配座の割合は、 の差と で決まる 教科書 §2.2

1 段目:数える。割合 は、全分子のうちその配座の分子の割合(足すと 1)

  • 右辺をボルツマン因子(以下、重み)と呼ぶ:その配座が anti の何倍あるか

  は 298 K で 2.48 kJ/mol
前提:配座どうしが平衡。配座 1 つずつの差は温度によらない(、)

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gauche は 2 つある 教科書 §2.3

次に三つの配座で数える。同じ の配座は、2 つとも数える

温度 T298 K

ブタンの三つの配座の (上)と重み(下)

  • gauche+ と gauche− は鏡像で が同じ(等価な極小):重みも 2 つ足す
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割合は、重みの和で割る 教科書 §2.4

割合にするには、全部の重みの和で割る

重みの和(分配関数と呼ぶ)  は anti を 0 として測る

  • 温度を上げると gauche の重みが 1 に近づき、その割合は増える

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例題:anti と二つの gauche の存在比

ブタンの配座の は、anti を 0 として、gauche+・gauche− が各 3 kJ/mol 高い。この差は温度によらないとする。298 K で kJ/mol
(1) 298 K で、gauche 2 つを合わせた割合は何 % ですか
  13 % 23 % 37 % 60 %
(2) 温度を上げると、この割合は増えますか、減りますか

解き方 は より少し小さい

① 求めるものgauche 2 つを合わせた割合

② 式と前提 = 重み ÷ ( は 3 つの重みの和)

③ 代入anti:

 gauche+・gauche−:各

 

(1) gauche 2 つ:、37 %

(2) 増える:gauche の重みが 1 に近づく(350 K で 42 %)

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形を 1 つに決めると、 はどれだけ下がるか 教科書 §2.5

2 段目:とれる向きの数が減ると、その形は少なくなる。その分をエントロピーで数える

後前

分子がとれる配置の広がり(いくつの極小に、どれだけの幅でいられるか) 極小は同じエネルギー・同じ幅とする

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閉じた形は、なぜ少ないか 教科書 §2.5

水素結合で閉じると は下がる。しかし単結合 2 本の向きが決まり、 も下がる

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演習 A:配座の数と、形を決めるときのエントロピー

問 1・2:ある分子は、C–C 結合のまわりの回転で、配座 P を 1 つと、互いに鏡像の配座 Q を 2 つとる。298 K で、Q 1 つの は P より 1.0 kJ/mol 高い。、、、

  1. P の重みを 1 とすると、Q 1 つの重みはいくつですか
  2. P の割合と、Q 2 つを合わせた割合は、それぞれ何 % ですか
  3. 別の分子は、水素結合して閉じると、単結合 1 本の向きが 3 通りから 1 通りに決まる。閉じた形の は開いた形より 4.0 kJ/mol 低い。開いた形の 3 通りの は同じとする。298 K で、閉じた形は全体の何 % ですか
    、

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演習 A の答え(1)

問 1・2:ある分子は、C–C 結合のまわりの回転で、配座 P を 1 つと、互いに鏡像の配座 Q を 2 つとる。298 K で、Q 1 つの は P より 1.0 kJ/mol 高い。、、、

差 1.0 < なので、重みは と 1 の間

問 1 P の重みを 1 とすると、Q 1 つの重みはいくつですか

① 求めるものQ 1 つの重み

② 式と前提重み

  kJ/mol

③ 代入

0.67

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演習 A の答え(2)

問 1・2:ある分子は、C–C 結合のまわりの回転で、配座 P を 1 つと、互いに鏡像の配座 Q を 2 つとる。298 K で、Q 1 つの は P より 1.0 kJ/mol 高い。、、、

Q 2 つの重み > P の 1 なので、Q が半分を超える

問 2 P の割合と、Q 2 つを合わせた割合は、それぞれ何 % ですか

① 求めるものP の割合と、Q 2 つを合わせた割合

② 式と前提 = 重み ÷ (Q は 2 つ)

③ 代入

 Q 2 つ:、P:

P は 43 %、Q 2 つで 57 %

④ 意味最安定の P が少数派

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演習 A の答え(3)

別の分子は、水素結合して閉じると、単結合 1 本の向きが 3 通りから 1 通りに決まる。閉じた形の は開いた形より 4.0 kJ/mol 低い。開いた形の 3 通りの は同じとする。、、

1 本なら は と同じくらいで、 の 4.0 より小さい:閉じた形が半分を超える

問 3 298 K で、閉じた形は全体の何 % ですか

① 求めるもの閉じた形の割合

② 式と前提

 比 [閉じた形]/[開いた形]

③ 代入

 、比 1.68

閉じた形 、63 %

④ 意味固定する単結合が少ないほど閉じた形が有利(2 本なら 36 %)

比

比

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基礎の確認受容体とゲスト:結合定数 は、何を表すか 教科書 §2.7

3 段目:ここまでの数え方を、分子がゲストを取り込む「結合」に使う。まず結合の強さの表し方

(1 M 基準) 前提:1 対 1

  • 受容体:ゲストを共有結合なしに取り込む分子。取り込むことを「結合」、結合していないものを「空いた」と呼ぶ
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柔軟な受容体の例:環を切った鎖は、どんな形をとるか 教科書 §2.7

18-クラウン-6 の環を 1 か所で切ると、同じ 6 つの O を持つ鎖 CH₃O(CH₂CH₂O)₅CH₃ になる

  • 形を変える受容体を柔軟な受容体と呼ぶ。K⁺ を囲めるのは、O が内側を向いた形だけ
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ゲストを挟める形は、どれだけあるか 教科書 §2.7

鎖の形は多すぎて数えられないので、模式で数える:腕の開きを 10 通りに分けたピンセット形の受容体

  • ゲストを挟めるのは、腕が平行な形(挟める形)だけ
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柔軟な受容体は、なぜ結合が弱くなるか 教科書 §2.7

挟める形が 1/10 しかないと、結合定数はどう変わるか

受容体全体について測る結合定数  挟める形の割合  挟める形(C)とゲストの結合定数
前提:形どうしも結合も平衡、結合できるのは挟める形だけ

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事前組織化:環にして形をそろえると、どう変わるか 教科書 §2.8

空いた受容体が挟める形に変わるときの の増加は、結合の前から形をそろえておけば無くなる

柔軟な受容体の f0.10

  • 腕の先どうしをつないで環にし、結合の前に形をそろえる(事前組織化)
  • 環のひずみで も変わることがある( は と の積)
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演習 B:環にすれば、強く結合するか

柔軟な受容体のうち、ゲストを挟める形の割合は 298 K で 。挟める形とゲストの結合定数は 。形どうしは平衡にある。 kJ/mol、、

  1. 柔軟な受容体の は何 M⁻¹ ですか
  2. この受容体を、挟める形のまま環にした(ゲストと接する部分と は同じ、)。(a) は柔軟な受容体の何倍ですか (b) は何 kJ/mol 下がりますか
  3. 腕が平行になれない向きに固定して環にした受容体もある。 のモデルで、「環にすれば必ず強く結合する」は正しいですか
    (a) 正しい (b) 誤り (c) 決められない

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演習 B の答え(1)

柔軟な受容体のうち、ゲストを挟める形の割合は 298 K で 。挟める形とゲストの結合定数は 。形どうしは平衡にある。 kJ/mol、、

に 1 より小さい を掛けるので、 M⁻¹ より小さい

問 1 柔軟な受容体の は何 M⁻¹ ですか

① 求めるもの受容体全体で見た結合定数

② 式と前提(形どうしも結合も平衡)

 結合できるのは挟める形だけ。

③ 代入

M⁻¹

④ 意味挟める形が 5 % なので、 の 1/20

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演習 B の答え(2)

柔軟な受容体のうち、ゲストを挟める形の割合は 298 K で 。挟める形とゲストの結合定数は 。形どうしは平衡にある。 kJ/mol、、

は 10 と 100 の間:下がる分は 5.7〜11.4 kJ/mol

問 2 この受容体を、挟める形のまま環にした(ゲストと接する部分と は同じ、)。(a) は柔軟な受容体の何倍ですか (b) は何 kJ/mol 下がりますか

① 求めるもの の比 環柔軟、 の下がる分

② 式と前提( は同じ)

③ 代入環柔軟

 下がる分

  kJ/mol

(a) 20 倍 (b) 約 7.4 kJ/mol 下がる

④ 意味 が上がる段()がなくなる

環柔軟

環柔軟

環柔軟下がる分

環柔軟下がる分

環柔軟下がる分

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演習 B の答え(3)

柔軟な受容体のうち、ゲストを挟める形の割合は 298 K で 。挟める形とゲストの結合定数は 。形どうしは平衡にある。 kJ/mol、、

問 3 腕が平行になれない向きに固定して環にした受容体もある。 のモデルで、「環にすれば必ず強く結合する」は正しいですか

① 求めるもの「必ず強く結合する」の正誤

② 式と前提(変わるのは )

③ 推論環(合う形):(問 2)

 環(挟めない形):、

(b) 誤り:強くなるのは環(合う形)だけ

要点: は、挟める形(結合できる形)の割合 に比例する

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研究の実例環を切ると、Li⁺ を取り込む強さはどれだけ変わるか 小テストの範囲外

D. J. Cram, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1988, 27, 1009(ノーベル講演。DOI: 10.1002/anie.198810093)

  • 結論:結合の前から O が内側を向いた環は、同じ部品の鎖よりはるかに強く Li⁺ を取り込む
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問い 1 の答え最安定構造だけでは足りない。分布で考える

問い 1:最安定構造だけを見ればよいか

  • 予想の答えは 3(例題)
  • 形を 1 つに決めると が下がる。結合の強さも、結合できる形の割合 で決まる
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まとめ:問い 1 への答え

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教科書で読む範囲 教科書 第 2 章

節 内容
§2.1 観測される量は、配座の集団の平均であること
§2.4 の一部 分配関数が表すもの(使われている配座の数の目安)
§2.4 の後半 二つの gauche をまとめた (2 通りの数え方)
§2.5 の発展の箱 分布からエントロピーを数える()
§2.6 温度による存在比の変化(ファントホッフの式、熱容量の差)
§2.7 の一部 結合した割合の曲線 (第 8 章で使う)
§2.7 結合のエンタルピーとエントロピーの補償( が有利になるほど が不利になる)

この表の内容は読んでおくとよいが、小テストには出さない

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次回予告:第 3 回 溶媒和と酸・塩基平衡 教科書 第 3 章

溶媒 X と Y でのプロトン移動(模式)

次回の問い

同じ分子でも、
なぜ環境で性質が変わるか

  • 今日の続き:分子のまわりの溶媒の並び方でも、 と が変わる

今日の復習 演習 A・B、小テスト第 2 回 次回の予習 教科書 §3.1〜3.2

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発展:時間があれば・自習用

授業では扱わないことがあるスライド。小テストの範囲外

  1. 分配関数 が表すもの
  2. 二つの gauche をまとめて数える
  3. 分布から、エントロピーを数える
  4. 温度を上げると、少ない配座は必ず増えるか
  5. ファントホッフの式:温度で増えるか減るかを導く
  6. モデルの前提と適用条件
  7. 環が鎖より Li⁺ を強く取り込むのは、なぜか
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分配関数 が表すもの 教科書 §2.4

集団

  • 使われている配座の数の目安:低温で 1(anti だけ)、高温で 3。ブタンは 298 K で 1.60
  • 集団全体の :anti を 0 として、298 K で −1.16 kJ/mol
  • 熱力学量も から出る( は平均のエンタルピー):ブタン 298 K で 7.6 J/(K·mol)。発展 3 と同じ
  • 統計力学の分子の分配関数は、並進・回転・振動を含むすべての状態の和

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二つの gauche をまとめて数える 教科書 §2.4

  • 数え方は 2 通り:配座ごとの値(3 と 3)で重みを 2 つ足すか、2 つをまとめた (298 K で 1.28 kJ/mol)を 1 つとして使う。どちらも
  • 両方を一緒に使って 2 を二重に掛けない(右の灰の棒:、)
  • まとめた値が 低いのは、エントロピーが 大きいため(極小が 2 つ)
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分布から、エントロピーを数える 教科書 §2.5 の発展

配座の分布のエントロピー(conf は conformation)  配座 の割合 前提:配座どうしの行き来が測定より速い

  • 一つの配座だけ()なら 0、三つが同じだけなら J/(K·mol)
  • ブタン(298 K): J/(K·mol)。形を 1 つに固定すると、この分を失う
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温度を上げると、少ない配座は必ず増えるか 教科書 §2.6

本編 p.7・例題:温度を上げると、少ない gauche は増える(重みが 1 に近づく)。閉じた形(p.10)でも成り立つか

温度 T298 K

ブタンの gauche(2 つの合計)と、水素結合で閉じた形の割合

  • 298 K では gauche 2 つ 37 %、閉じた形 36 %(どちらも少ない側)。閉じた形と開いた形が同じ量になるのは K
  • 温度を上げると、gauche は増え、閉じた形は減る。何が違うのか
  • 答え: のうち、温度で動くのは だけ
  • 高温で増えるのは の高い側:増減は の符号で決まる
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ファントホッフの式:温度で増えるか減るかを導く 教科書 §2.6

閉じた形開いた形

① 平衡定数 :二つの形の濃度の比(同じ分子の形どうしなので単位はなく、数の比と同じ)

閉じた形開いた形

② 数の比は、ボルツマン分布(p.5)で の差 から決まる

③ を入れる

④ 指数を二つに分ける: なので、 が残るのは の項だけ

⑤ 両辺の対数をとる(。掛け算は足し算になる)

傾き横軸切片

⑥ 横軸を にとると直線(ファントホッフの式):傾きから (傾き )、切片から が分かる

閉じた形開いた形

平衡定数=二つの形の濃度の比(単位なし) 下の式がファントホッフの式(前提:・ が温度によらない)
anti → gauche 2 つ:、 開いた形 → 閉じた形:、

  • 温度で動くのは の項だけ: の高い側が高温で増える
  • 多いかは 、増減は の符号
  • 測った を に描くと直線:傾きから 、切片から が分かる
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モデルの前提と適用条件 教科書 第 2 章 モデルの前提と適用条件

前提 崩れると 確かめる方法
配座どうしが平衡にある(行き来が測定より速い) 存在比が作り方や時間で決まり、ボルツマン分布にならない 時間をおいて、温度を変えて測り直す
・ が温度によらない ファントホッフの式の直線が曲がる 広い温度範囲で測る
極小の数・ポテンシャルの幅で を数える(振動数が低い) 硬い振動(振動数が高い)は熱で励起されず、幅の違いが にほとんど効かない。溶媒の並び方も に入る(第 3 回) 溶媒を替えて、 と を分けて測る
環にしても、挟める形とゲストの結合()は同じ 環のひずみや動きにくさで も変わる 形を構造解析で確かめ、 と を分けて測る
教科書 第 2 章
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環が鎖より Li⁺ を強く取り込むのは、なぜか 教科書 §2.8 の研究の実例

  • 鎖は 1000 を超える形をとり、Li⁺ を包めるのは 2 つ(原典の見積もり):形をそろえると が kJ/mol 上がる
  • 残りの大部分(目安 56 kJ/mol)は、O を内側にそろえる分と鎖の O の溶媒を外す分
  • 結論:Li⁺ を取り込む強さは、環のほうがはるかに大きい
    環の O は初めから内側を向き、まわりに溶媒も無いので、二つの不利が無い

(b) 結晶構造:Trueblood ほか, Acta Cryst. B 1991, 47, 389(CSD CAXWUT10。H は省略)。(a)(c) は模式

教科書 第 2 章

時間: 0.5 分

時間: 2.5 分 問いかけ:ノートを見ずに、と言ってから 2 分考えさせ、答えを口頭で言う。 言うこと:1:存在比は二つの状態の G の差(ΔG°)、速さは出発する状態から遷移状態まで(ΔG‡)。同じではない。今日は存在比の側を、三つ以上の配座に広げる(温度は発展)。 言うこと:2:ポテンシャルの幅が広い極小はエントロピーが大きい(取りうる配置が多い)。−TΔS が温度とともに大きくなり、347 K で逆転した。今日は「形を 1 つに決めると、エントロピーをどれだけ失うか」に進める。 見せ方:左は第 1 回の「存在比と速さは、図のどこで決まるか」の図、右は「温度を上げると、幅の広い極小はなぜ多くなるか」の図(200 K と 450 K)。右の図の下の分布は、その配置にいる確率(面積が存在割合)。

時間: 2.5 分 問いかけ:三択から予想を心の中で選ばせる(書かせない・集めない)。答えは例題で計算し、「問い 1 の答え」のスライドでまとめる。ここでは答えを言わない。 言うこと:有機化学では「anti が最安定」と習い、最安定配座だけで考えがち。実際の分子は、いくつもの配座の集団として存在する、という筋で 90 分を進める。 見せ方:右の絵は分子 100 個。橙が gauche。どの絵に近いか、と聞く。 言うこと:gauche+ と gauche− は、後ろの炭素のメチル基が右上にあるか左上にあるかの違い(鏡像)。

時間: 0.5 分 見せ方:上の帯を指す:第 I 部(構造・集団・環境)の 2 回目。前回の G = H − TS と「ポテンシャルの幅とエントロピー」を、今日は極小の数と、形を 1 つに決めることに広げる。 言うこと:3 段は一続き。1 段目の数え方を、2 段目でエントロピーに、3 段目で結合できる形の割合に使う。 言うこと:最後の一行:例題・演習の数値は実在の分子の値ではない。研究の実例だけは論文の値。

時間: 2.5 分 見せ方:左の粒から入る。分子 100 個を 2 つの配座に分ける。差が RT(2.48 kJ/mol)なら 73 : 27、差が 3 なら 77 : 23、差が 5.7 なら 91 : 9。差が RT の何倍かで分かれ方が決まる、と言う。 見せ方:粒の下の重みと右の曲線の点が同じ値。1 : 0.37 が 73 : 27。温度による違いは次のスライドで動かす。 言うこと:学部の復習(ボルツマン分布)なので短く。前回の「存在比は二つの状態の G の差」を、割合の式にしただけ。割合は、1 mol の分子のうち、ある瞬間にその形をとっている分子の割合。 言うこと:前提の行:ブタンの 3 kJ/mol は、今日はずっと G として与え、温度で変わらないとする。だからブタンでは配座ごとの G と H は同じ値。 言うこと:5.7 kJ/mol で 1/10 は、前回の速さの目安と同じ数(RT ln 10)。こちらは存在比の目安。 問いかけ:「anti が最安定なら、割合は anti が 100 % か」。 つまずき所:比べる量は ΔG と RT。kJ/mol と J/mol を取り違える。

時間: 2.5 分 見せ方:上は配座ごとの G(anti 0、gauche+・gauche− 3 kJ/mol)と、各極小の真下のニューマン投影。曲線の極大(配座どうしを結ぶ遷移状態)は模式で、重みには使わない。下の棒は重み(anti を 1)。 見せ方:① 298 K:gauche は 1 つずつ 0.30、2 つで 0.60 ② 温度を下げる(100 K):gauche の重みはほぼ 0 ③ 温度を上げる(1500 K):gauche の重みが 1 に近づき、三つが同じ数に近づく ④「298 K に戻す」。 言うこと:gauche+ と gauche− は、投影図の後ろの炭素のメチル基が右上か左上か、の違い。鏡像の関係で G が同じ。数は「等価な極小がいくつあるか」(縮重度)。 言うこと:割合は、次のスライドの式で例題として出す。ここでは重みまで。 見せ方:つまみにフォーカスがあると、矢印キーはつまみを動かす。進めるときは図の外をクリックしてから。

時間: 2 分 見せ方:右の図は配座ごとに重みを並べ、足して q = 1.60 にしたもの。割合は次の例題で出す。 言うこと:割合はその配座の重みを q で割ると出る(足すと 1)。q を分配関数と呼ぶ。名前の由来や熱力学量との関係は発展 1(授業では触れなくてよい)。 言うこと:3 段目の「挟める形の割合 f」も、同じく「その形の重み ÷ q」で数える。 言うこと:温度の一行は例題の (2) で使う。いつも成り立つかは発展 4。 つまずき所:gauche を 1 つだけ数える(q = 1.30)。等価な極小は、重みを 1 つずつ足す。

時間: 3 分 問いかけ:開く前に「どの式を使う?」「anti の重みはいくつ?」と聞いてから、解き方を 1 段ずつ開く。 見せ方:右の列は動く式(問いの図の下の式が 1 行ずつ替わる。→ キーの段と一緒に進む)。図は問いの図(重みも割合も ?)。② で p_i の式、③ で anti の重み 1、続けて gauche の重み 0.30、次に図が重みの入った版に替わり、q = 0.30 + 1 + 0.30 = 1.60 が出る。答え (1) で割合の分数 0.37。答え (2) で図が完成版に替わる:右が分子 100 個の粒(gauche は 2 つ合わせて 37 個、350 K では 42 個)。最安定の anti は 63 個だけ、と青を指す。 言うこと:「解き方」の横の概算の箱:計算の前に、gauche 1 つの重みは e^(−1.2) で e^(−1) = 0.37 より少し小さい、と見込んでおく(割合は予想と見比べるため、ここでは言わない)。 言うこと:③ anti は G = 0 なので重みは e^0 = 1。これが「anti を 1 として数える」の意味。q は 3 つの重みを足すだけ。図が重みの入った版に替わり、棒の 0.30・1・0.30 を足したものが q。 言うこと:(2) は配座ごとの G を温度によらないとしたモデルの結果で、実在のブタンの高温での予測ではない。 つまずき所:① gauche を 1 つだけ数える:0.30/1.30 = 23 % ② 割合ではなく重みの和 0.60 を答える(60 %)③ gauche 1 つの重み 0.30 を 2 つで分けてしまう:0.15/1.15 = 13 %。 言うこと:聞かれたら、丸めずに計算すると 37.3 %(RT = 2.48 に丸めると 37.4 %)、350 K で 41.6 %。

時間: 2.5 分 言うこと:前回の「ポテンシャルの幅」と今日の「極小の数」を 1 つの式にまとめるスライド。式は S = k_B ln W を 1 mol あたりにしたもの。 見せ方:左の図:単結合 1 本は、自由に回れば三つの極小をとる(その間を行き来している)。右の粒:3 つが同じ数なら、1 つの向きの分子は 33 個。1 つに決めると W が 1/3 になり、R ln 3 = 9.1 J/(K·mol) 下がる。三つの極小が同じエネルギー・同じ幅のときの値で、エネルギーが違えば下がる分は小さい(ブタンなら 7.6、発展 3)。 言うこと:次のスライドで、単結合 2 本の向きが決まる分子に使う。

時間: 3.5 分 見せ方:左の構造は模式で、実在の分子の値ではない。O–C と C–C の単結合 2 本(緑)が、閉じた形では水素結合(点線)で 5 員環になり、1 つの向きに決まる。開いた形では 2 本が自由に回り、向きの組は 9 通り(どれも同じ G とする)。 見せ方:投影の HTML では、開いた形の 2 本が回り続け、下の 3 × 3 の表に、行き来した向きの組が緑で増えていく(9 / 9 まで)。「開いた形は 9 通り、閉じた形は水素結合で決まる 1 通り」と、表どうしを指して比べる。「↺ 数え直す」で表を空にする。 見せ方:下の粒:H だけで比べると閉じた形は 83 個。向きの組 9 通りを数えると 36 個。ここが今日の 2 段目の答え。 言うこと:閉じた形は水素結合の分だけ H が低い(ΔH = −4.0 kJ/mol)。でも向きの組が 9 → 1 になり、S が 18.3 J/(K·mol) 低い。298 K では −TΔS = +5.4 が ΔH の −4.0 を上回り、閉じた形は少ない側(36 %)。 見せ方:右の棒を左から:ΔH(灰、下向き)→ −TΔS(緑、上向き)→ ΔG(枠、上に +1.4)。粒の 5.0 : 9 と棒の結果は同じ(比 0.56)。 言うこと:比べる両状態は、閉じた形と開いた形。差はいつも、開いた形が閉じた形に変わるときの値。 言うこと:実際の分子内水素結合では、溶媒も ΔH と ΔS に入る(第 3 回)。 言うこと:聞かれたら、−TΔS = 298 × 0.01827 = 5.44、ΔG = 1.44 kJ/mol、比 [閉じた形]/[開いた形] = e^(−1.44/2.48) = 0.56、割合 0.56/1.56 = 36 %。

時間: 6 分 見せ方:個人で 6 分 → 答えのスライド。右の図は考えるための問いの図(上:P・Q・Q の重みの棒、下:開いた形 → 閉じた形の ΔH・−TΔS・ΔG の棒。入っているのは ΔH = −4.0 だけ)。「上の棒の ? を埋める」「下の棒の ? の向きと長さを考える」と言ってから解かせる。 言うこと:1 は 30 秒で答えられる入り口。2 は例題の数値替えで、最安定の P が多数派でない(43 %)ことに気づかせる(問い 1 の答えにつながる)。3 は p.9・10 の配座のエントロピーの数値替え:固定する単結合が 1 本なら −TΔS は RT ln 3 = 2.7 kJ/mol で、ΔH の −4.0 に負け、閉じた形が多い側(63 %)になる(p.10 の 2 本では 36 %)。 言うこと:1・2 の ΔG(1.0 kJ/mol)は「P が Q 1 つに変わるとき」の差(Q 1 つの値から P の値を引く)。Q 1 つずつの値で、Q が 2 つあることの R ln 2 は入れない。 見せ方:解いている間、講師は前で待ち、決めた時刻に全体へ一言かける(教室は回らない)。 言うこと:聞かれたら、exp(−1.0/2.48) = 0.668、2 × 0.668/2.336 = 57 %。 時間が足りなければ:1 を削る(2 の途中で出てくる)。

時間: 1 分 見せ方:右の列は動く式。問いの図(Q の棒が ?)の下に、② で e^(−ΔG/RT) と ΔG = +1.0、③ で ΔG の値が指数に入って e^(−0.40)、答えで 0.67 が出て、図が Q の棒が 0.67 に伸びた図に替わる。 言うこと:概算の箱:差が RT のとき重みは e^(−1) = 0.37。差が RT より小さいので、重みは 0.37 より大きく、1 より小さい。

時間: 1.5 分 見せ方:右の列は動く式(式は 2 行まで)。問 1 の答えの図(重みまで。割合は ?)の下に、③ で q、続けて Q 2 つの割合の分数が出る(Q 2 つの重み 0.67 × 2 = 1.34 が分子になる)。答えで P の割合の分数(1/2.34 = 0.43)が出て、④ で図が替わり、右の積み上げに Q 57 %・P 43 % が入る。P は半分の破線の下、と指す。 言うこと:概算の箱:割合を出す前に、重みの和を比べれば多数派が分かる。 つまずき所:「1 つずつなら P のほうが多いのに」と言う学生には、Q は 2 つあって重みが 2 倍になるので、1 つずつは 1.0 kJ/mol 高くても、合わせると P より多い、と言う。Q 2 つをまとめると、G は 1.0 − 1.72 = −0.72 kJ/mol で P より低い(発展 2 の見方)。

時間: 2 分 見せ方:右の列は動く式(式は 2 行まで)。問いの図(ΔH = −4.0 だけ。−TΔS と ΔG は ?)の下に、② で −TΔS = RT ln 3 と ΔG = ΔH − TΔS、③ で −TΔS = 2.7、続けて ΔG = −1.3 と 比 = e^(1.3/2.48) = e^0.52 = 1.68 が入り、答えで割合 1.68/(1 + 1.68) が出て、図が完成版(−TΔS +2.7、ΔG −1.3、閉じた形 63 %)に替わる。 言うこと:概算の箱:単結合 1 本を固定すると失う S は R ln 3。298 K で −TΔS = RT ln 3 = 2.7 kJ/mol で、RT(2.48)と同じくらい。ΔH の −4.0 のほうが大きいので、閉じた形が多い側になる、と計算の前に見込む。 言うこと:② の −TΔS = RT ln 3 は、ΔS = −R ln 3(p.9)に −T を掛けたもの。T × R = RT なので、RT ln 3 と書ける。 言うこと:④:p.10 の分子(固定する単結合 2 本、−TΔS = 5.4)では閉じた形は 36 %。同じ ΔH でも、固定する単結合の数で多い側・少ない側が入れ替わる。固定する単結合が少ないほど、失うエントロピーが小さい。 つまずき所:① ΔS の J と kJ を取り違える(9.1 J/(K·mol) × 298 K = 2.7 kJ/mol)② 比を割合と答える(1.68 は比。割合は 比/(1 + 比))③ −TΔS の符号を逆にする(閉じると S が下がるので −TΔS は正で、不利)。 言うこと:聞かれたら、丸めずに計算すると −TΔS = 2.72、ΔG = −1.28、閉じた形 62.6 %。

時間: 2 分 言うこと:今日の 3 段目は、配座の集団の考え方を、分子がゲストを取り込む「結合」(分子認識)に使う。ここでの「結合」は共有結合ではなく、受容体がゲストを取り込むこと。「空いた」は結合していないもの。 言うこと:具体例は 18-クラウン-6 と K⁺。環の 6 つの O の非共有電子対が K⁺ の正電荷を囲んで引き合う(点線)。クラウンエーテルはペダーセンが見つけ、1987 年のノーベル化学賞(ペダーセン・クラム・レーン)につながった。研究の実例のスフェランド・ポダンドも同じく O で金属イオンを囲む受容体。値は溶媒で大きく変わる(第 3 回)ので、ここでは数値を載せない。右の目盛りは、K の大きさの読み方。 言うこと:このあとのピンセット形の受容体は、形の数を数えるための模式。 見せ方:① 左の絵:空いた受容体(18-クラウン-6)+ 空いたゲスト(K⁺)⇌ 結合した受容体。その下の K の式:結合した受容体 ÷(空いた受容体 × 空いたゲスト)。単位 M⁻¹。酸の Ka と同じ、ふつうの平衡定数 ② 右の目盛り:K、ΔG°(298 K、1 M 基準)、半分が結合する空いたゲストの濃度(1/K)を縦にそろえた。K が 1 桁上がるごとに ΔG° は 5.7 kJ/mol 下がり、半分が結合する濃度は 1/10 になる。 言うこと:2 行目の理由:K = [結合]/([空いた受容体][ゲスト]) で [結合] = [空いた受容体](半分が結合)とおくと、[ゲスト] = 1/K。K = 1000 M⁻¹ なら 1 mM。 言うこと:ΔG° は 1 M を基準にした値で、基準の濃度を替えると ΔG° の値も変わる(K の比、ΔΔG° は変わらない)。 言うこと:空いたゲストの濃度に対して結合した割合を描く曲線(飽和の曲線)は第 8 回の触媒で使う。ここでは K と ΔG° の対応だけ。

時間: 1.5 分 見せ方:投影の HTML では、左の鎖の単結合が 1 本ずつ回り、形が変わり続ける(動きの速さは模式)。右の K⁺ を囲む形を指して、「左の中で、右のような形はどれくらいあるか」と聞く。 言うこと:前のスライドの 18-クラウン-6 は環なので、鎖よりとれる形がずっと少なく、K⁺ を囲む形に近い(空の環でも、全部の O が内側に固まっているわけではない)。環を 1 か所で切った鎖は、同じ 6 つの O を持つが、単結合が 15 本回り、きわめて多くの形をとる。 言うこと:鎖が K⁺ を取り込むときは、このごく一部の形にそろう必要がある。今日の 3 段目の問いは「その分、結合はどれだけ弱くなるか」。 言うこと:実際、K⁺ の取り込みは環のほうが鎖よりずっと強い(大環状効果。値は溶媒で大きく変わるので載せない)。 見せ方:どちらの構造も模型で、結晶構造ではない。H は省いた。点線は O の非共有電子対と K⁺ の引き合い(共有結合ではない)。

時間: 2 分 見せ方:上の絵:腕の開きを 10 通りに分けた形(受容体の「形」は配座と同じ意味)。青が挟める形。下の棒:どの形も重み 1(形どうしのエネルギーが同じ)。q = 10、f = 1/10。 言うこと:1 段目の分配関数をもう一度使う:f = 挟める形の重み ÷ q。 言うこと:2 段目の「形を 1 つに決めると、S が下がる」と同じ(ここは極小の数でなく、ポテンシャルの幅が 1/10)。次のスライドで、それで結合定数がどう変わるかを見る。 つまずき所:最もエネルギーの低い形が挟める形なら、f は大きい、と考える。f はほかの形の数(重みの和)でも決まる(問い 1 と同じ)。

時間: 3.5 分 見せ方:左はピンセット形の柔軟な受容体(腕が平行のときだけ青=挟める形)とゲスト(緑の丸)。右は G の図(1 M 基準の標準の G を、状態ごとに並べた。横は反応の道筋ではない)。 見せ方:「▶ 結合させる」で約 8 秒。初めは腕がいろいろに開き閉じする → 挟める形にそろい、右に +5.7 と 10 通り → 1 通りの絵 → ゲストが入り、右に −20(K_C = 3200 M⁻¹)→ 合わせて ΔG° = −14.3 と K_obs = 320 M⁻¹ が出る。 言うこと:前のスライドで、形 1 つずつの G はどれも同じと言った。ここで比べるのは 1 つずつではなく、10 通りをとれる集団と、1 通りだけの状態。p.9 の「向きの数が減る」と同じで、S が下がる分だけ G が上がる。形 1 つの G は同じでも、この差は出る。 言うこと:右の 3 つの高さ:空いた受容体(10 通り)+ ゲスト、挟める形だけの仮の状態 + ゲスト、結合した受容体。実際の受容体が真ん中を経るわけではない。G は状態で決まる量なので、考えやすい 2 つに分けて足してよい。 言うこと:空いた受容体を挟める形だけにすると、G が −RT ln f 上がる。−RT ln 0.10 = +5.7 kJ/mol。形どうしのエネルギーが同じなので、上がる分は配座のエントロピー(閉じた形で下がったのと同じ種類)。この分だけ結合が弱い。 言うこと:そこから挟める形とゲストが結合する(ΔG°_C = −20、K_C = 3.2×10³ M⁻¹)。 言うこと:この f が問い 1 の続き:多い形ではなく、結合できる形がどれだけあるかで結合の強さが決まる。第 4 回(カーティン・ハメット)では、同じ考え方を速度で使う。 つまずき所:K_C と K_obs を混ぜる。実験で測るのは K_obs。

時間: 3 分 見せ方:左から、柔軟な受容体・挟める形のまま環にした受容体・ずれた形で環にした受容体。上は f・ΔG°・K_obs = f K_C。つまみは柔軟な受容体の f だけに効く。 見せ方:下の粒から読む:空いたゲスト 1 mM で、受容体 100 個のうち結合しているのは、柔軟な受容体 24 個、環(合う形)76 個、環(ずれた形)0.3 個。 言うこと:ΔG°_C = −20 kJ/mol(K_C = 3.2×10³ M⁻¹、298 K)は三つで同じとする。f は柔軟な受容体 0.10、環(合う形)1、環(ずれた形)0.001。 言うこと:環にしても形は完全には固まらない(環の中の単結合も少しは回る)。環(ずれた形)は、まれに挟める形まで曲がれる分が 0.001。 見せ方:つまみで f を 1 に近づける:柔軟な受容体が環(合う形)に追いつく。f を 0.001 へ:環(ずれた形)と同じになる。f が 1/10 になるごとに、ΔG° が 5.7 kJ/mol 高くなる。 見せ方:演習 B の数値(f = 0.05、K_C = 1.0×10⁴)はこの図と違う。演習の前に、演習の値でつまみを動かして見せない。 言うこと:「環にすれば必ず結合が強くなる」とは言えない。強くなるのは、環(合う形)のときだけ。 言うこと:実際には、環にすると挟める形そのものがひずみ、K_C も変わりうる(発展 6 の表)。 見せ方:つまみにフォーカスがあると、矢印キーはつまみを動かす。進めるときは図の外をクリックしてから。

時間: 7 分 見せ方:右の図は問いの図(上:柔軟な受容体と環(合う形)の G の段。値は ?。下:二つの環の形)。「上の段の ? と、挟めない形の環の f を考える」と言ってから解かせる。 言うこと:1 は p.18 の式に代入する入り口。2 は f を 0.05 → 1 にしたときの倍率と ΔG°(RT ln 20 = 7.4 kJ/mol)。柔軟な受容体で G が上がっていた −RT ln 0.05 = 7.4 kJ/mol の段が、ちょうどなくなる。3 は設計の判断(環にすれば必ず強くなる、とは言えない)。 見せ方:3 には選んで判定するボタンがある(投影の HTML でだけ出る)。解く時間が終わってから、手を挙げさせた答えを押して見せ、答えのスライドへ進む。 言うこと:聞かれたら、0.05 × 1.0×10⁴ = 500、2.48 × ln 20 = 7.43。 時間が足りなければ:2 の ΔG° を削る(倍率だけ)。

時間: 1 分 見せ方:右の列は動く式。問いの図(G の段、値は ?)の下に、② で K_obs = f K_C と与えられた値、③ で値が式に入る。答えで 500 M⁻¹ が出て、図の柔軟な受容体の下に K_obs = 500 M⁻¹ が入る。 言うこと:柔軟な受容体は、空いた形から、まず挟める形にそろえ(段を上がる)、そこから K_C で結合する、と段を指でたどる。

時間: 1.5 分 見せ方:右の列は動く式。問 1 の答えの図の下に、② で K の比の式、③ で K_C が約分されて 1/0.05 = 20、続けて RT ln 20 → 2.48 × 3.0 = 7.4 が出る。答えで図が替わり、柔軟な受容体の段の +7.4、環の K_obs = 1.0×10⁴ M⁻¹、二つの結合した状態の差 7.4(20 倍)が入る。差の 7.4 が、柔軟な受容体で G が上がっていた段と同じ長さ、と指す。 つまずき所:「K_C が変わる」と考える。前提(ゲストと接する部分は同じ)を指す。7.4 kJ/mol は、柔軟な受容体が結合のときに挟める形にそろえる分(T × R ln 20)。環にした受容体では、空いた状態ではじめから挟める形だけをとるので、この段がない、と言う。

時間: 1.5 分 見せ方:右の図は問いの図(環(合う形)はゲスト入り、環(挟めない形)は形だけ、f と K_obs は ?)。答えのあと → で、環(挟めない形)にゲストが入れない(×)図に替わり、f と K_obs が入る。 つまずき所:「このモデルでは決められない」を選ぶ。モデルの前提(結合できるのは挟める形だけ)の中では決められる。実際の分子で、挟めない形の環が別の形で結合する可能性は、モデルの外(前提の確認が要る)。 言うこと:環にする設計では、形が合っているかを、構造解析や温度を変えた測定(ΔH と ΔS を分ける)で確かめる(発展 6 の表)。

時間: 2 分 言うこと:演習 B(環にすれば強く結合するか)の実例。スフェランドは挟める形のまま環にした受容体、ポダンドは柔軟な受容体に当たる。 言うこと:背景:クラムは、結合の前から受容体の形がそろっていること(事前組織化)が強い結合の条件だと考え、O が初めから内側を向くスフェランドを設計した。比べる相手は、同じアニソールの部品を鎖につないだポダンド。違いは環を閉じる共有結合 1 本だけ。 言うこと:聞かれたら、条件はピクラート塩、CDCl₃(D₂O で飽和)、25 °C。結合の自由エネルギーの大きさはスフェランド > 96 kJ/mol、ポダンド < 25.1 kJ/mol(どちらも結合は有利で、値は下限と上限)。差は > 71 kJ/mol、71/5.7 ≈ 12.5 で結合定数で > 10¹² 倍。 言うこと:なぜこれほど違うかの内訳(結晶構造と溶媒)は発展 7。今日の f だけでは説明しきれない。

時間: 1.5 分 言うこと:冒頭の予想の答え合わせ。1 を選んだ人が多ければ「最安定構造だけを見る」考え、2 なら gauche を 1 つだけ数えた(0.30/1.30 = 23 %)、と言う。 言うこと:丸めずに言えば anti 62.7 %、gauche 1 つずつ 18.7 %。 言うこと:演習 A の P と Q(最安定の P が 43 % で少数派)、演習 B の柔軟な受容体(挟める形が 5 %)も、同じ答えの例。 言うこと:第 4 回(カーティン・ハメット)で、少数の配座から主生成物ができる例として再び出てくる。

時間: 1.5 分 見せ方:図の三つの欄(数える、形を 1 つに決める、結合する形をそろえる)を左から指し、下の答えの 1 文を読む。 言うこと:三つの欄は同じ数え方(重みと分配関数)でつながっている。

時間: 1 分 言うこと:表の節と発展の箱は、自習で読む所(教科書 第 2 章 §2.1〜2.9)。本編で扱った節は、各スライドの右上の札で指している。

時間: 1 分 言うこと:次回は、溶媒が電荷のまわりに並ぶことで、比べる両側(酸と共役塩基、反応物と生成物)の G がどう変わるかを見る。「どの化学種も溶媒の中で G が下がるから、差は変わらない」とは言えないので、差を見る。

言うこと:本編では、q は「割合を出す分母(重みの和)」としてだけ使う。ここは、なぜ名前が付いているか、の補足。 言うこと:右の図:ブタンの q(anti 0、gauche 2 つが 3 kJ/mol)を温度に対して描いた。低温では anti しか使われず q = 1、高温では三つが同じだけ使われ q → 3。q は「重みの付いた、使われている状態の数」。 言うこと:2 行目:q の対数が集団全体の G(anti を基準)。298 K で −RT ln 1.596 = −1.16 kJ/mol(q は丸める前の 1.596 を使う):anti だけのときより、集団全体の G はこれだけ低い。発展 2 の「まとめた G」は、gauche 2 つだけをこの考え方でまとめたもの。 言うこと:3 行目:ここでは配座ごとの G を温度によらない値(G = H)とした。⟨H⟩ = 2 × 0.187 × 3.0 = 1.12 kJ/mol、⟨H⟩/T = 3.76 J/(K·mol)、R ln 1.596 = 3.89 J/(K·mol)、S = 7.6 J/(K·mol)(発展 3 と同じ)。 言うこと:4 行目:統計力学では、分子の分配関数(すべてのエネルギー準位の和)から、内部エネルギー・エントロピー・自由エネルギーが求まる。今日の配座の和はその一部。

言うこと:「割合は、重みの和で割る」のスライドの一段先。二つの gauche を 1 つの「gauche 状態」とみると、重みは 2w = exp(−(3 − RT ln 2)/RT)。RT ln 2 = 1.72 kJ/mol だけ G が下がって見える。これは S が R ln 2 = 5.8 J/(K·mol) 大きいこと(極小が 2 つ。配座 1 つずつの差は 0)。 言うこと:文献や計算ソフトの値が、配座ごとの値か、まとめた値かを確かめてから使う。 つまずき所:すでに 2 つを合わせた G(1.28)を使ったうえで、さらに 2 を掛ける(二重に数える)。灰の棒を指す。

言うこと:「形を 1 つに決めると、S はどれだけ下がるか」のスライドの一段先。S_conf は配座の分布の広がりの分だけのエントロピー(各配座の極小のまわりの振動のエントロピーは、配座ごとの G に含めてある)。 言うこと:式は、ボルツマンの S = k_B ln W に、割合のばらつきを入れたもの(ギブスのエントロピー)。本編の ΔS = R ln(W後/W前) は、極小が同じエネルギーのときの特別な場合。 言うこと:聞かれたら、298 K のブタン(p = 0.627・0.187・0.187)で −Σ p ln p = 0.920、× R = 7.65 J/(K·mol)。R ln 3 = 9.13 J/(K·mol)。 言うこと:「単結合 1 本を固定すると R ln 3」は、三つが同じエネルギーのときの上限。ブタンのようにエネルギーが違うと 7.6 に減る。

言うこと:本編 p.7 と例題の (2) のルール(温度を上げると、少ない配座が増える)を、水素結合で閉じた形(p.10)で確かめるスライド(時間があれば・自習用)。 見せ方:左は割合の温度変化、右は ΔH → −TΔS → ΔG の棒(anti → gauche 2 つ、開いた形 → 閉じた形)。 見せ方:① 298 K:gauche 37 %、閉じた形 36 %(どちらも少ない側で、ほぼ同じ割合)② 温度を上げる:gauche は増え(600 K で 52 %)、閉じた形は減る(600 K で 20 %)③ 右の棒:閉じた形では −TΔS(緑)が上向きに伸び、ΔG が大きくなる ④ 150 K まで下げる:閉じた形が多数派(73 %)になる。 言うこと:1 行目の 219 K は、同じ量(ΔG = 0)になる温度。ΔG = ΔH − TΔS = 0 から T = ΔH/ΔS = −4.0/(−0.0183) = 219 K。 言うこと:ブタンは anti が gauche(2 つ合計)に変わるとき ΔH = +3、ΔS = R ln 2 = +5.8 J/(K·mol)(配座 1 つずつの差では ΔS = 0。極小が 2 つの分だけ、まとめると S が大きい)。閉じた形は ΔH = −4.0、ΔS = −18.3。右の棒はこの値。 言うこと:聞かれたら、閉じた形の割合は 150・250・298・350・600 K で 73・43・36・31・20 %。 問いかけ:「同じ少ない側なのに、温度で逆に動くのはなぜか」と問い、少し待ってから答えの行を読む。 言うこと:答えの行の K は平衡定数で、二つの形の濃度の比([gauche 2 つ]/[anti]、[閉じた形]/[開いた形]。同じ分子の形どうしなので単位はない)。K = e^(−ΔG/RT) に ΔG = ΔH − TΔS を入れて二つに分けると e^(−ΔH/RT) e^(ΔS/R)。e^(ΔS/R) は温度で変わらないので、温度で動くのは ΔH の項だけ。 言うこと:右の棒で確かめる:gauche は ΔH > 0(H の高い側)なので高温で増える。閉じた形は ΔH < 0 で、H が低いのに S がもっと低くて少ない側だったので、温度を上げるとさらに減る。「少ない側が増える」が成り立つのは、H の高い側が少ない側のときだけ。 言うこと:だから温度を変えて K を測ると、温度で動く分から ΔH、残りから ΔS が分かる。環にした受容体で、形がそろったかを確かめるのにも使える(発展 6 の表)。ln K を 1/T に描く直線(ファントホッフの式)の導き方は次の発展 5。 言うこと:あとの基礎の確認の結合定数も、同じ平衡定数(濃度の比。単位が M⁻¹ になる)。 見せ方:つまみにフォーカスがあると、矢印キーはつまみを動かす。進めるときは図の外をクリックしてから。

見せ方:上の式は動く式(投影の HTML。式をクリックするか「次へ ▶」で 1 手ずつ進む。配布 PDF は最後の 2 行だけ)。① K の意味 ② ボルツマン分布 ③ ΔG = ΔH − TΔS ④ 二つに分ける ⑤ 対数 ⑥ 直線の傾きと切片、の 6 段。 言うこと:① K は平衡定数で、二つの形の濃度の比([閉じた形]/[開いた形]、gauche なら [gauche 2 つ]/[anti])。同じ分子の形どうしなので単位はなく、数の比(重みの比)と同じ。あとの基礎の確認の結合定数も、同じ平衡定数(濃度の比。単位が M⁻¹ になる)。 言うこと:発展 4 の答えの行(温度で動くのは ΔH の項だけ)を導く。K = e^(−ΔG/RT) に ΔG = ΔH − TΔS を入れて二つの項に分ける。e^(ΔS/R) は温度で変わらないので、温度で動くのは ΔH の項だけ。両辺の対数をとった下の式がファントホッフの式。 見せ方:左の図:横軸 1/T(右へ行くほど低温)。gauche は ΔH > 0 で右下がり(高温=左で K が大きい)、閉じた形は ΔH < 0 で右上がり。破線は 1/T = 0(温度を限りなく上げた極限)まで延ばした線で、切片が ΔS/R:gauche は ln 2(極小が 2 つ)、閉じた形は −2 ln 3(単結合 2 本を固定)。 言うこと:「少ない側が増える」が成り立つのは、H の高い側が少ない側のとき(gauche)。閉じた形は H が低いのに S がもっと低くて少ない側だったので、温度を上げるとさらに減る。 言うこと:3 行目:温度を変えて存在比を測れば、ΔH と ΔS を分けられる。環にした受容体で ΔH と ΔS を分けて測るのにも使う(発展 6 の表)。第 4 回の温度と選択性の話(速度定数の比で ΔΔH‡ と ΔΔS‡ を分ける)も同じ形。 言うこと:聞かれたら、高温では、開いた形の 9 通りと閉じた形の 1 通りが同じだけ使われる分布に近づく(K → e^(ΔS/R) = 1/9、閉じた形の割合 1/10 = 10 %)。 言うこと:広い温度範囲では ΔH・ΔS 自体が温度で変わり、直線が曲がる(熱容量の差。教科書 §2.6 の発展)。

言うこと:本編と発展 4 で前提が崩れる例(配座ごとの ΔG 一定のモデルが閉じた形では成り立たない、ずれた形の環では f がほぼ 0(0.001)になる)を扱ったので、この表はまとめ直し。時間があれば使う。 言うこと:1 行目:ゆっくりしか入れ替わらない配座(例:立体障害の大きいビアリール)は、作り方で割合が決まり、時間とともにボルツマン分布へ近づく。 言うこと:3 行目:極小のエネルギーは零点エネルギー(第 5 回)でもずれる。

見せ方:(a) 溶媒の中の Li⁺ は溶媒分子に囲まれている。(b) スフェランドの Li⁺ 錯体の実際の結晶構造:6 つのアニソールの O(赤)が環の内側を向き、上下 3 つずつ交互に並んで、Li⁺(紫)を八面体の向きに囲む。Li–O は 6 本とも 2.14 Å。芳香環とメチル基が外側の殻になり、溶媒は中に入れない。(c) ポダンドは結合のときに鎖の形をそろえ、O のまわりの溶媒を外す(Li⁺ の溶媒を外すのは環も同じなので、差には入らない)。 言うこと:点線は共有結合ではない。O の非共有電子対と Li⁺ の正電荷の引き合い(イオン–双極子の相互作用)。 言うこと:スフェランドの O は溶媒が近づけない。ポダンドは結合のときに、形をそろえる分と 6 つの O の脱溶媒和の分だけ不利になる。 言うこと:1 つ目の箇条:ポダンドは単結合が多く、とれる形は 1000 を超える。金属を包めるのは 2 つだけ。形がほぼ同じエネルギーとすると −RT ln(2/1000) = RT ln 500 = 15 kJ/mol。 言うこと:15 kJ/mol は 71 kJ/mol を超える差のほんの一部。残りは、酸素どうしの反発のある形にそろえる分と、酸素の脱溶媒和(溶媒は第 3 回)。今日の K_obs = f K_C の f だけでは説明しきれない。