励起状態の緩和と発光分子の設計

有機量子化学特論 第 07 回 | 教科書 第 7 章

光を吸収する分子が必ずしもよく光らないのはなぜか

有機量子化学特論 第 07 回 励起状態の緩和と発光分子の設計

前回の復習

1 前回の問い「有利な電子移動ほど速いか」:駆動力を上げすぎると、なぜ遅くなりましたか

2 再組織化エネルギー を下げても速くならないのは、どんなときでしたか

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問い 1光を吸収する分子が必ずしもよく光らないのはなぜか

吸収の強い色素は、弱い色素の 5 倍の光子を吸収する(モル吸光係数 が 5 倍)

知りたいのは、出てくる蛍光の光子の数(明るさ)

予想 吸収の強い色素は、弱い色素より明るいですか

  1. 必ず明るい
  2. 必ず暗い
  3. 吸収の強さだけでは決まらない
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今日の流れ 教科書 §7.1〜7.12

  1. 光を吸収した分子に、何が起こるか
    形の変化、S₁ から戻る過程、量子収率と寿命
  2. 問い 1光を吸収する分子が必ずしもよく光らないのはなぜか
    放射過程と無放射過程の競争、無放射過程を速くするもの → 例題 → 演習 A
  3. 明るさと量子収率を見分ける
    → 演習 B:何が変わったかを見分ける

今日の数値は説明のために選んだ値(研究の実例を除く)

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光を吸収すると、分子の形はどう変わるか 教科書 §1.4

エチレン(CH₂=CH₂):S₀(基底状態)と S₁(励起状態)では、安定な形が違う

  • 光を吸収した瞬間は平面のまま。S₁ で 90° ねじれ、光を出さずに S₀ へ戻る
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光を吸収した分子は、どう動くか 教科書 §7.2〜7.4

光る分子では:吸収した形のまま光るのか

模式の蛍光分子(特定の分子ではない)

  • 吸収も発光も核を止めたまま縦に移る(フランク・コンドン原理)。光るのは S₁ の極小から
  • 吸収と発光の差(ストークスシフト)は 。形の変化が大きいほど大きい
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S₁ の極小から、どう戻るか 教科書 §7.5

光を出す過程は 1 つ、出さない過程は 3 つ

  • は、光を出さない 3 つの過程の速度定数の和

は速度定数(s⁻¹) r:radiative nr:nonradiative 前提:一次の過程

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100 個のうち、何個光るか 教科書 §7.6

その割合が量子収率 で、 と の比で決まる

  • 例:
  • 明るさ ∝ 吸収した光 ×
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と で、 と を分ける 教科書 §7.6

が同じでも で分かれる。両方測れば、二つの速度定数が出る

寿命 :S₁ の数が (0.37)に減る時間
前提:発光する種は一つ、減衰は単一指数、吸収した光子はすべて S₁ になる

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よく吸収する分子は、 も大きいか 教科書 §7.7

帯の面積が大きいほど が大きい

ストリックラー・バーグの関係  モル吸光係数(積分は帯の面積)  帯の位置(波数)  屈折率
前提:吸収と発光が同じ二つの状態の間で、励起で形がほとんど変わらない(崩れると と合わない)

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よく吸収する分子は、よく光るか 教科書 §7.8

が 5 倍なら、5 倍明るいか

二つの色素は同じ溶媒で、発光の位置も同じ

測った寿命 は、弱い色素が  ns、強い色素が  ns

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暗いのは、なぜか:無放射過程との競争 教科書 §7.8

吸収も も 5 倍なのに は 1/12: が約 140 倍

  • 吸収の強い色素では、励起した分子の 95 % が光を出さずに失活する
  • どの無放射過程が速いのかは、 と だけでは決まらない
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無放射過程は、何で速くなるか:エネルギーの差 教科書 §7.9

別の分子で見る:S₁ と S₀ の差 (目安として発光のエネルギーで見る)

S₁ と S₀ の差 ΔE1.50 eV(145 kJ/mol)

エネルギーギャップ則の目安(形は模式)

  • 差が小さいほど、渡す振動の量子が少なく、内部転換が速い(エネルギーギャップ則)
  • C–D は量子が小さく、同じ差を渡すのに多くの量子が要るので、さらに遅い( s⁻¹ なら、1.5 eV で は C–H 0.50、C–D 0.99)
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分子がねじれると、なぜ光らないか 教科書 §7.10

を速くするもの:S₁ での分子のねじれ

手で動かす0°

  • S₁ でねじれると S₀ に近づき、内部転換で戻る
  • 架橋で回れなくすると光る。粘度が高いと、ねじれが遅い

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例題:架橋した蛍光分子の量子収率が上がった理由

二つの環を C=C でつないだ蛍光分子を架橋して、C=C のまわりの回転を抑えた。架橋前は が 、 が  ns、架橋後は が 、 が  ns だった。前提は p.9 と同じ。架橋で と はどう変わりましたか
1. が増え、 は同じ 2. は同じで、 が減った 3. も も増えた

解き方 と が同じ倍率なら、 は?

① 求めるもの架橋前と架橋後の ・

② 式と前提、

③ 代入前 、 → 1.0、4.0

 後 、 → 1.0、1.0(×10⁸ s⁻¹)

2( が 4.0 → 1.0)

④ 意味どの無放射過程が遅くなったかは、未確定

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演習 A:量子収率と寿命から、速度定数を分ける

別の蛍光分子を改変した。前提は例題と同じ。改変前は が 、 が  ns、改変後は が 、 が  ns

  1. 改変前の と はいくつですか
  2. 改変後の と を出し、改変で変わったのはどちらかを答えてください
  3. 別の改変では が 、 が  ns になった。吸収帯の位置と形は変わらないとする。吸収帯の面積は、改変前の何倍になると考えられますか

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演習 A の答え(1)

別の蛍光分子を改変した。前提は例題と同じ。改変前は が 、 が  ns、改変後は が 、 が  ns

棒の長さ のうち、 は 1 割

問 1 改変前の と はいくつですか

① 求めるもの改変前の二つの速度定数

② 式と前提、

③ 代入

 

、 s⁻¹

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演習 A の答え(2)

別の蛍光分子を改変した。前提は例題と同じ。改変前は が 、 が  ns、改変後は が 、 が  ns

も も 4 倍。 は?

問 2 改変後の と を出し、改変で変わったのはどちらかを答えてください

① 求めるもの改変後の二つの速度定数を、問 1 と比べる

② 式と前提問 1 と同じ式(同じ前提)

③ 代入 s⁻¹

  s⁻¹

は同じ。変わったのは (9.0 → 1.5 で 1/6)

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演習 A の答え(3)

別の蛍光分子を改変した。前提は例題と同じ。改変前は が 、 が  ns、改変後は が 、 が  ns

が同じなので、 は に比例する

問 3 別の改変では が 、 が  ns になった。吸収帯の位置と形は変わらないとする。吸収帯の面積は、改変前の何倍になると考えられますか

① 求めるもの の、改変前に対する倍率

② 式と前提、 吸収帯の面積

③ 代入 s⁻¹

 改変前の 1.0 との比 → 2.5 倍

約 2.5 倍

④ 意味問 2 とは逆に が増えた。 だけでは、どちらが変わったか分からない

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研究の実例アミノ基を 4 員環に替えると 小テストの範囲外

実際に測られた色素でも、 はほぼ同じで が約 1/8

J. B. Grimm ら, Nat. Methods 2015, 12, 244–250(DOI: 10.1038/nmeth.3256)

  • TMR のジメチルアミノ基 2 つをアゼチジン(4 員環)に替えたのが JF549
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明るく見えることと、量子収率が大きいことは同じか 教科書 §7.11

同じ 2 倍の明るさでも、 と が違う

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演習 B:何が変わったかを見分ける

ある蛍光分子(もとの分子)は が 、 が  ns である。これを二通りに改変した。改変体 1 は が 、 が  ns、改変体 2 は が 、 が  ns。前提は例題と同じ

  1. 改変体 1 と 2 のそれぞれで、もとの分子からの変化を説明するのはどれですか
    a. が増えた b. が減った c. 吸収した光が増えた
  2. 改変体 2 についての問 1 の答えを、別の測定で確かめたい。もとの分子と、まず比べる測定はどれですか
    a. 吸収帯の面積 b. 蛍光の寿命 c. 粘度を変えたときの

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演習 B の答え(1)

ある蛍光分子(もとの分子)は が 、 が  ns である。これを二通りに改変した。改変体 1 は が 、 が  ns、改変体 2 は が 、 が  ns。前提は例題と同じ

問 1 改変体 1 と 2 のそれぞれで、もとの分子からの変化を説明するのはどれですか
a. が増えた b. が減った c. 吸収した光が増えた

① 求めるもの三つの分子の ・ を比べる

② 式と前提、

③ 代入もとの分子: が 、 が

 改変体 1: が 、 が

 改変体 2: が 、 が (×10⁸ s⁻¹)

改変体 1 は b、改変体 2 は a

④ 意味 が同じでも、 で分かれる

改変体:改変体:

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演習 B の答え(2)

ある蛍光分子(もとの分子)は が 、 が  ns である。これを二通りに改変した。改変体 1 は が 、 が  ns、改変体 2 は が 、 が  ns。前提は例題と同じ

問 2 改変体 2 についての問 1 の答えを、別の測定で確かめたい。もとの分子と、まず比べる測定はどれですか
a. 吸収帯の面積 b. 蛍光の寿命 c. 粘度を変えたときの

① 求めるもの が増えたかを確かめる測定

② 式と前提 吸収帯の面積(同じ溶媒、位置と形が同じとき)

③ 推論 が 4 倍(問 1)なら、面積も約 4 倍

 寿命は測定済み。粘度で分かるのは

a. 吸収帯の面積

吸収帯の面積

面積

面積

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問い 1 の答え光るかどうかは、無放射過程との競争で決まる

問い 1:光を吸収する分子が必ずしもよく光らないのはなぜか

  • よく吸収すれば は大きい
  • しかし なので、 が大きければ光らない
  • 吸収の強い色素は が約 140 倍。発光の位置が同じなので のせいではない。どの過程かは粘度などで確かめる
  • 予想の答え:3
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まとめ:問い 1 への答え

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教科書で読む範囲 教科書 第 7 章

節 内容
§7.4 吸収と発光のスペクトルの形(振動の構造、鏡像の関係)
§7.4 の小見出し 極小のずれを変えたときの数値
§7.5 項間交差の速度定数と重い原子の効果、りん光
§7.6 多成分の寿命と平均、形成効率が 1 でない場合
§7.7 の発展の箱 ストリックラー・バーグの式で を数で見積もる、成り立たない例の詳しい扱い
§7.11 の小見出し を増やしたときの明るさ

この表の内容は読んでおくとよいが、小テストには出さない(小テストはスライドの本編から出す)

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次回予告:第 8 回 触媒の状態と反応の速さ 教科書 第 8 章

同じ反応の二つの触媒

次回の問い

基質を強く結合する触媒ほどよいか

  • 触媒も、いくつかの状態に分かれ、それぞれから出る過程が競う

今日の復習 演習 A・B、小テスト第 7 回 次回の予習 教科書 §8.1〜8.3

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発展:時間があれば・自習用

授業では扱わないことがあるスライド。小テストの範囲外

  1. モデルの前提と適用条件
  2. ストリックラー・バーグの式で、 を見積もる
  3. 極小のずれを動かす
  4. を 4 倍にしたときの明るさ
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モデルの前提と適用条件 教科書 第 7 章 モデルの前提と適用条件

前提 崩れると 確かめる方法
発光する種は一つ、減衰は単一指数 平均の寿命と全体の から
出した が、どの種の値でもない
減衰の形を調べる(多指数か)
吸収した光子はすべて S₁ になる() が になり、 を小さく見積もる 静的な消光を調べる
遅延蛍光・状態の再生成がない 三重項から戻る分で、
寿命と が見かけ上ずれる
酸素の有無で比べる、
長い時間の減衰を見る
吸収と発光は同じ二つの状態の間 発光する形が違うと、吸収から出した と
が合わない(ねじれる分子など)
吸収から出した と
を比べる
  • 遅延蛍光:T₁ から S₁ に戻ってから出る蛍光
  • 静的な消光:光を吸う前から消光剤と組になっていて、光らない分子
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ストリックラー・バーグの式で、 を見積もる 教科書 §7.7 の発展

s⁻¹  cm⁻¹(発光と吸収の位置が近いとき)  M⁻¹ cm⁻¹(近似式)

  • 吸収の弱い色素: 1.96、波数 22,000 cm⁻¹、帯の面積 4.3×10⁷ M⁻¹ cm⁻² → 1.2×10⁸ s⁻¹( の 1.0×10⁸ と 2 割以内で合う)
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極小のずれを動かす 教科書 §7.2〜7.4

励起で形が大きく変わる分子ほど、ストークスシフトが大きい

極小のずれ d(励起で形が変わる大きさ)0.40

模式の蛍光分子(特定の分子ではない)

  • :図の縦の短い幅( で 0.16 eV、約 15 kJ/mol)
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を 4 倍にしたときの明るさ 教科書 §7.11

を増やすと吸収も増えるので、同じ濃度なら明るさは 8 倍

  • は 2 倍、 は 1/2
  • 吸収は 4 倍、出てくる光子は 倍
  • 濃度を 1/4 にして吸収をそろえると、明るさは 2 倍
教科書 第 7 章

時間: 0.5 分 時間が足りなければ:省く順は ① 演習 A の問 1(p.17。答えと図だけ見せる)② p.14 の動く図の「手で動かす」③ p.20 の研究の実例(1 分で図だけ)④ p.5 のエチレン(動く図を流すだけ)。合わせて約 3 分。

時間: 2.5 分 問いかけ:自分のノートを閉じて 1.5 分考えさせ、答えを口頭で言う。 見せ方:1 の答えでは、左の図の右側(−ΔG° > λ で k_ET が下がる側)を指す。放物線の交点はこのスライドに無いので口で言う。 言うこと:1 の答え:−ΔG° が λ を超えると、二つの放物線の交点が、D–A の放物線の極小より外側に移って高くなる(逆転領域)。 言うこと:2 の答え:逆転領域(−ΔG° > λ)のとき。λ を下げると、−ΔG° と λ の差がさらに開き、遅くなる。 言うこと:今日は電子移動のときと同じ「電子は速く、核は遅い」を、光の吸収と発光に使う。電子移動は、励起状態を光らせずに失活させる過程の一つ(消光)でもある。

時間: 2 分 見せ方:印 1 つが光子 5 個。上の枠が吸収した光子(100 個と 500 個)、下の枠が出てくる光子で、いまは ?。薄い溶液で、同じ濃度・同じ光・同じ時間で比べる。 問いかけ:三択から予想を心の中で選ばせる(書かせない・集めない)。答え合わせは「問い 1 の答え」のスライドで、ここでは答えを言わない。 言うこと:1 は「よく吸収するから明るい」と考える答え。今日は、下の枠の数がどう決まるかを見る。 言うこと:蛍光プローブ、有機 EL、蛍光標識の設計で、よく吸収するのに光らない分子は多い(例:研究の実例のピペリジン体は、TMR と同じ骨格でよく吸収するのに Φ_F が 0.10)。

時間: 0.5 分 見せ方:上の帯を指す:第 III 部(光・触媒・設計)の 1 回目。第 5 回の振動と同位体、第 6 回の放物線と λ を使う。 言うこと:第 9 回(統合演習)の事例 I(暗い蛍光分子の改変)で、今日の k_r と k_nr の分け方を使う。

時間: 1.5 分 見せ方:「▶ 光を当てる」で約 9 秒かけて 4 段が自動で進む。① 点が縦に上がる。形は平面のまま(左の分子が動かないことを指す)② S₁ でエネルギーの低い向きへ緩和し、90° の極小のまわりで少し振動して止まる ③ 90° で光を出さずに S₀ へ ④ S₀ で緩和して平面に戻る(図は 180° 側へ下りるが、0° 側へ戻る分子もある)。 言うこと:ここで見てほしいのは二つ。光を吸収してから形が変わること。形が変わると、光らずに戻ることがあること。この二つを、これから蛍光分子で順に見る。 言うこと:C=C の 2 本目の線が薄くなるのは、π 結合が弱まることの絵。曲線は模式で、実際のねじれと戻りは ps より短い。 時間が足りなければ:動く図を 1 回流すだけにする(1 分)。

時間: 2.5 分 言うこと:学部の復習(フランク・コンドン)に、第 6 回の λ を足した一段先。 見せ方:「▶ 光を当てる」で約 7 秒。S₀ の極小 → 縦に上がる(吸収 2.66 eV、466 nm)→ S₁ の極小へ緩和 → 縦に下りる(発光 2.34 eV、530 nm)→ S₀ の極小へ緩和。最後に λ の印が 2 つと、差 0.32 eV が出る。模式の蛍光分子で、特定の分子ではない。 言うこと:なぜ 2λ か(二つの放物線の曲率が同じとき):吸収は S₀ の極小の位置で縦に上がるので S₁ の極小より λ 上に着く。発光は S₁ の極小の位置で縦に下りるので S₀ の極小より λ 上に着く。合わせて 2λ(印 2 本を指す)。λ = 0.16 eV ≈ 15 kJ/mol(1 eV = 96.5 kJ/mol)。 言うこと:形の変化が大きいほど極小のずれが大きく、シフトも大きい。形が変わらなければ吸収と発光は同じ位置(発展 3 で、ずれを動かして見られる)。 言うこと:λ は波長に使わない(この授業の約束)ので、波長は「nm」と言葉で言う。

時間: 2 分 見せ方:ヤブロンスキー図(模式)。S₁ から出る過程を、左から一つずつ指す。 言うこと:失活は、S₁ が S₀ などに戻って励起のエネルギーを失うこと。 言うこと:内部転換(IC)は電子状態を変えて振動のエネルギーにする。項間交差(ISC)はスピンの向きを変えて T₁ へ。T₁ からのりん光は学部の範囲で、今日は使わない。消光の矢印は S₁ から失われることの絵で、行き先は S₀ とは限らない(電子移動なら電荷分離の状態)。 言うこと:聞かれたら、ほかの分子との消光は k_q[消光剤] で、相手が励起状態よりずっと多ければ擬一次として k_nr に足せる。分子内の電子移動(第 9 回の事例 I)なら一次。 言うこと:第 4 回と同じ:一つの出発物から二つの過程が出るなら、比は速度定数の比。次のスライドで、この比を量子収率として書く。

時間: 3 分 言うこと:学部の復習(量子収率)。S₁ になった 100 個のうち、33 個が蛍光を出して戻り、67 個が光を出さずに失活する。33/100 = 1/(1 + 2) が Φ_F の式。 見せ方:橙の丸を指して k_r の側、灰の丸を指して k_nr の側と言う。どの分子がどちらになるかは確率で、数えると割合が決まる。 言うこと:明るさの行:問い 1 の下の枠の数は、吸収した光子の数に Φ_F を掛けた数。後でこの式を使う。 見せ方:丸 1 つは分子 1 個(問いの枠の印は光子)。

時間: 3.5 分 見せ方:初めは 1 本(k_r 1.0、k_nr 2.0、×10⁸ s⁻¹):Φ_F 0.33、τ 3.3 ns。1/e の点線と曲線の交わる所が τ。 問いかけ:ボタンを押す前に「量子収率を上げたい。k_r を 2 倍にするのと、k_nr を半分にするのと、τ はそれぞれどちらへ動くか」と聞く(10 秒)。 見せ方:「k_r を 2 倍」:Φ_F 0.50、τ 2.5 ns(棒が伸びる)→「k_nr を 1/2」:Φ_F 0.50、τ 5.0 ns(棒が縮む)。橙の割合は同じ 0.50 で、棒の長さが逆に動くことを指す。「初めに戻す」で消える。 言うこと:棒の長さが 1/τ、橙が k_r、灰が k_nr、橙の割合が Φ_F。Φ_F の式と τ の式を割ると Φ_F = k_r τ。これを k_r について解き、1/τ = k_r + k_nr から k_r を引くと k_nr。今日の例題・演習・研究の実例は、この二つの式と棒で読む。 言うこと:Φ_F と τ の両方を測れば、k_r と k_nr の変化を分けられる。Φ_F だけでは分けられない。 言うこと:前提の 3 つ目は、吸収した光子から S₁ ができる割合 η が 1 ということ(発展 1 の表)。多成分の平均寿命を無条件に代入しない。

時間: 2 分 言うこと:一段先の話(ストリックラー・バーグ)。光を吸収しやすい遷移は、光を出しやすい遷移でもある(同じ二つの状態を結ぶ遷移の強さ。アインシュタインの A 係数と B 係数の関係)。 見せ方:二つの色素の吸収帯(同じ位置・形)。吸収の強い色素の面積は 5 倍 → k_r も 5 倍(1.0×10⁸ と 5.0×10⁸ s⁻¹)。近似式の数値は発展 2。 言うこと:ルール(次のスライドで確かめる):よく吸収する分子は k_r が大きい。だから、よく光るはず。 言うこと:前提の「形がほとんど変わらない」は、吸収から発光までの動きで極小のずれが小さいこと。ねじれる分子など、光を出す形が吸収した形と大きく違うと、吸収から出した k_r と Φ_F/τ が合わない(発展 1)。ε は第 6 回の比誘電率 ε_r とは別の量。

時間: 2.5 分 言うこと:前のスライドのルール(よく吸収する分子は k_r が大きい → よく光るはず)を確かめるスライド。 問いかけ:開いた時点では下の枠は ?。「では 5 倍明るいか」と聞く(10 秒)→ → で下の枠が入る:100 × 0.60 = 60 個、500 × 0.05 = 25 個。 言うこと:値:吸収の弱い色素 k_r 1.0×10⁸、Φ_F 0.60、τ 6.0 ns。吸収の強い色素 k_r 5.0×10⁸、Φ_F 0.05、τ 0.10 ns。k_r は Φ_F/τ で出したもので、ストリックラー・バーグの見積もりとも合う(1.2×10⁸ と 5.8×10⁸)。 言うこと:何が違うのか、と問うて次のスライドへ。

時間: 2.5 分 言うこと:前のスライドの答え。k_nr = (1 − Φ_F)/τ:吸収の弱い色素 0.40/6.0 ns = 6.7×10⁷、吸収の強い色素 0.95/0.10 ns = 9.5×10⁹ s⁻¹(約 140 倍)。図の札に同じ計算がある。95/0.67 で約 140 倍。 見せ方:丸 1 つは S₁ になった分子 1 個で、橙の数が Φ_F(「100 個のうち、何個光るか」のスライドと同じ)。 言うこと:量子収率は、k_r そのものではなく、k_r と k_nr の比で決まる。問い 1 の答えの筋:よく吸収すれば k_r は大きいが、光るかどうかは無放射過程との競争で決まる。 言うこと:では、k_nr は何で速くなるのか(次の 2 ページ)。このデータだけでは、どの無放射過程(内部転換・項間交差・消光)が速いのかは決まらない。問い 1 の答えのスライドでもう一度言う。

時間: 2.5 分 言うこと:k_nr を速くするものの 1 つ目。一段先の話(エネルギーギャップ則)。前のスライドの二つの色素は発光の位置が同じなので、ここでは別の分子で ΔE の効き方を見る。 見せ方:上のはしご:ΔE の長さを振動の量子 1 個ずつで区切った。下は内部転換の速度定数 k_IC の目安(対数)。破線の k_r = 10⁸ s⁻¹ より上では、内部転換が蛍光より速い。 見せ方:つまみの順:① 1.5 eV(827 nm):C–H 4.1 個、C–D 5.5 個。k_IC は C–H 1.0×10⁸、C–D 1.5×10⁶ s⁻¹(k_r = 10⁸ s⁻¹ なら Φ_F は 0.50 と 0.99)② 2.5 eV(496 nm、青緑)へ:C–H 6.8 個、C–D 9.2 個。内部転換は無視できる ③ 1.2 eV(約 1030 nm)へ:C–H 3.2 個、C–D 4.4 個、C–H の Φ_F は 0.09。 言うこと:近赤外で光る色素が暗くなりやすい理由。 言うこと:しくみ:電子のエネルギー ΔE を、硬い振動(C–H 伸縮など)の何個分かに一度に渡して戻る。個数が多いほど起こりにくい。第 6 回の逆転領域(生成物の振動の準位に渡す)と同じ考え方。C–D の振動数は C–H の 0.734 倍(第 5 回)。 言うこと:ΔE は、理論では二つの状態の極小どうしの差。実験では発光のエネルギーで整理することが多いので、今日は目安としてそれで見る。この模式では二つは λ だけ違うが、結論は変わらない。

時間: 3 分 言うこと:p.5 のエチレンの続き。動く図の左が今日の分子(二つの環を C=C でつないだ分子)。下の模型は、右の環の向きをそろえた 3 つの形。 見せ方:操作の順:①「架橋なし」で「▶ 光を当てる」:点が縦に上がる → S₁ でエネルギーの低い向きへ緩和して 90° へ → S₁ と S₀ が近づいた所で灰の波線(光を出さない)→ S₀ で緩和して平面へ(約 8 秒)。 見せ方:②「架橋あり」→「▶」:灰の帯(架橋の限界、約 30°、位置は模式)で止まり、帯の手前で橙の直線(光を出す)→ 平面へ。もう一度 ① を見せるときは先に「架橋なし」を押す。 見せ方:③「手で動かす」:S₀・S₁ のボタンとつまみで、90° では S₁ が極小へ下がり、S₀ が極大へ上がって近づくことを、同じねじれ角で比べる。架橋ありではつまみが 27° までしか動かない。 言うこと:この図はねじれ角だけの切り口なので 90° でも差が残る。ほかの動き(エチレンなら C のピラミッド化)も合わせると二つの面が交わる所があり、そこで一気に S₀ へ戻る(円錐交差という名前だけ言う。詳しい議論はしない)。 言うこと:聞かれたら:スチルベン(二つのベンゼン環を CH=CH でつないだ分子)を模した分子。動く図の環は簡略化して描いている。模型は計算で組んだもの。 言うこと:架橋は環と環を別の結合でつなぐこと(模型の緑)。回転を止めると、平面に近い形にとどまって S₀ に近づけず、光る。この模式の曲線には平面の極小を描いていないが、実際の分子では平面の近くに浅い極小と小さな障壁があることも多い。 言うこと:粘度:ねじれは溶媒を押しのける動きなので、粘い溶媒では遅い。演習 B で使う。 言うこと:動く図は 1 分子の最も起こりやすい経路の模式で、時間の目盛りも数値もない。実際は蛍光とねじれが競い、架橋なしでも一部は光る。 見せ方:つまみにフォーカスがあると矢印キーはつまみを動かす。 時間が足りなければ:③ を飛ばす(① ② で要点は言える)。

時間: 4 分 問いかけ:スライドを開いたら、まず 1〜3 を心の中で選ばせる(10 秒)。そのあと「何を求める?」「どの式を使う?」と聞いてから、解き方を 1 段ずつ開く。 言うこと:概算の箱:Φ_F も τ も同じ 2.5 倍なので、割り算 Φ_F/τ は変わらないと見込む。 見せ方:右の列は動く式(図の下に式 2 行)。② を開いたら破線の枠を指して「枠の長さが 1/τ、そのうち橙の割合が Φ_F」と言う。答えで図が完成版に替わったら、橙(k_r 1.0)は同じで灰だけが 4.0 → 1.0 に縮むことを指す。 言うこと:② の前提は p.9 の凡例(発光する種は一つ、減衰は単一指数、η = 1)。 つまずき所:① 量子収率が上がったので k_r が増えたと読む ② 単位:ns を s に直す(10⁻⁹)③ 多成分の寿命の平均と試料全体の量子収率を、同じ式に無条件で代入する。 問いかけ:追加で「このデータだけで、遅くなった無放射過程の機構(ねじれ、内部転換、項間交差)まで決められるか」→ 決められない(④)。

時間: 6 分 見せ方:個人で 6 分 → 答えのスライド。右の図は考えるための問いの図(上:問 1・2 の棒、下:問 3 の棒と吸収帯)。使う式は例題の ②。「破線の枠の長さが 1/τ。その中の橙(k_r)と灰(k_nr)の境目を埋める」「下の図で、問 3 の吸収帯は改変前より大きいか小さいか」と言ってから解かせる。解いている間、講師は前で待ち、決めた時刻に全体へ一言かける(教室は回らない)。 言うこと:1 は 30 秒で答えられる入り口。2 は例題と同じ判断(数値替え)。3 は一段先の話(ストリックラー・バーグ)で、まず k_r を出し、その比を吸収帯の面積の比にする。 言うこと:答えの値:前 k_r 1.0×10⁸、k_nr 9.0×10⁸。後 1.0×10⁸、1.5×10⁸。問 3:k_r 2.5×10⁸、k_nr 7.5×10⁸、面積は 2.5 倍。 時間が足りなければ:1 を削る(2 の途中で出てくる)。

時間: 1 分 見せ方:答えで図の改変前の行に橙 1.0・灰 9.0 が入る(改変後の行は ? のまま)。 言うこと:概算の箱:Φ_F が 0.10 なので、棒の長さ 1/τ = 10×10⁸ s⁻¹ のうち橙は 1 割、灰が 9 割。 つまずき所:単位:ns を s に直す(10⁻⁹)。 時間が足りなければ:→ を押して答えの行と図だけを見せ(10 秒)、次のスライドへ。改変前の値は次のスライドの図の最初の行にも出る。

時間: 1.5 分 見せ方:答えで図が完成版に替わったら、橙(k_r 1.0)は同じで、灰(k_nr)だけ 9.0 → 1.5。棒の長さ 1/τ が 10 → 2.5、橙の割合 Φ_F が 0.10 → 0.40。例題の図と同じ読み方。 言うこと:概算の箱:Φ_F も τ も同じ 4 倍なので、割り算 Φ_F/τ は変わらない(例題と同じ形)。 言うこと:答えのあとで:量子収率が 4 倍になったのは、k_r が 4 倍になったからではなく、無放射過程が 1/6 に遅くなったから。 つまずき所:「Φ_F が 4 倍なので k_r が 4 倍」と答える学生には、τ も 4 倍になっていることを指す(p.9 の動く図の「k_nr を 1/2」と同じ向き)。

時間: 2 分 見せ方:右の列は図の下に式が 1 行ずつ替わる(③ の 2.5 が、次の段で比 2.5/1.0 に移る)。答えで図が完成版に替わる:τ が同じ 1.0 ns なので棒の長さは同じで、橙(k_r)が 1.0 → 2.5 に伸び、灰(k_nr)が 9.0 → 7.5 に縮む。下の吸収帯は面積の比 2.5(p.10 と同じ描き方)。予想であることを指す。 言うこと:概算の箱:τ が同じなら、棒の長さ 1/τ は同じ。Φ_F が 0.10 → 0.25 の 2.5 倍なら橙も 2.5 倍。聞かれたら k_nr = 0.75/1.0 ns = 7.5×10⁸ s⁻¹(改変前の 9.0 より少し小さい)。 言うこと:② の比例は、吸収帯の位置と形が同じとき(問題文)で、ストリックラー・バーグの前提(同じ二つの状態の間、形の変化が小さい)の中での推定。 言うこと:④ 問 2 とは逆に、今度は k_r の増加で Φ_F が上がった。Φ_F が上がっただけでは、どちらか分からない。寿命で分ける。

時間: 1.5 分 言うこと:研究の実例で、小テストの範囲外。6 員環(ピペリジン体)では逆に k_nr が大きい。演習 A と同じ計算を、実際の測定値でやってみるスライド。細胞や 1 分子の観察で広く使われている色素(Janelia Fluor 549)、と一言。TMR はテトラメチルローダミン。吸収・発光の位置はほぼ同じで、Φ_F は 2 倍以上。 見せ方:構造式の橙の丸が替えたアミノ基。下の棒は、Φ_F と τ から計算した S₁ の減衰の速度定数の内訳(橙 k_r、灰 k_nr。例題と同じ読み方)。橙はほぼ同じで、灰が 1/8 に縮むことを指す。 言うこと:棒の k_r・k_nr は、論文の Φ_F と τ から本講義で計算した値(論文には書かれていない)。 言うこと:聞かれたら:TMR k_r 1.9×10⁸、k_nr 2.7×10⁸ s⁻¹。JF549 k_r 2.3×10⁸、k_nr 3.2×10⁷ s⁻¹。ピペリジン体 k_r 1.7×10⁸、k_nr 1.5×10⁹ s⁻¹(値は HEPES 水溶液)。 言うこと:機構は言い過ぎない:論文は、励起後に N から骨格へ電子が移り、C–N 結合がねじれた状態(TICT)から光らずに戻る、という解釈を挙げている。4 員環では N が電子を出しにくく、この過程が遅くなる、と著者は説明している。k_r と k_nr の分け方は、機構によらずデータから言える。 言うこと:ε は TMR で 7.8×10⁴ M⁻¹ cm⁻¹。よく吸収する色素でも、k_nr しだいで暗い(今日の問い 1)。第 9 回では、アミンから蛍光団への電子移動で暗くなる分子を扱う。 時間が足りなければ:図だけを見せて 1 分で。

時間: 2 分 言うこと:吸収の強さ、見かけの蛍光の強さ、量子収率を区別する。出てくる光子の数 = 吸収した光子の数 × Φ_F。 見せ方:左が初めの分子(k_r 1、k_nr 2。p.9 の初めと同じ):150 個吸収して 50 個。印 1 つが光子 5 個。 見せ方:中:濃度を 2 倍:300 個吸収して 100 個。Φ_F と τ は同じ(濃すぎると光が奥まで届かない・自分の光を吸う、と口で)。 見せ方:右:k_nr を 1/4(架橋など):150 個吸収して 100 個。Φ_F は 2 倍、τ も 2 倍。 問いかけ:「明るさだけを測って、どちらの場合か分かるか」→ 分からない。Φ_F と τ を測れば分かる。 言うこと:k_r を増やす場合は吸収も増える。その話は発展 4。

時間: 5 分 見せ方:個人で 5 分 → 答えのスライド。右の図は考えるための問いの図(三つの分子の棒。破線の枠の長さが 1/τ、内訳は ?)。「三つの枠の中の、橙(k_r)と灰(k_nr)の境目を埋める」「改変体 1 と 2 は Φ_F が同じでも、枠の長さが逆に動いている」と言ってから解かせる。解いている間、講師は前で待ち、決めた時刻に全体へ一言かける(教室は回らない)。 見せ方:問 1 と問 2 には選んで判定するボタンがある(投影の HTML でだけ出る)。解く時間が終わってから、手を挙げさせた答えを講師が押して見せ、答えのスライドへ進む。使う式は例題の ②。 言うこと:1 は今日の中心(Φ_F が同じでも τ で分かれる)。2 は判別の測定の選択(一段先の話と、p.14 の粘度を使う)。 言うこと:答えの値:もとの分子 k_r 1.0×10⁸、k_nr 2.3×10⁸。改変体 1 1.0×10⁸、0.67×10⁸。改変体 2 4.0×10⁸、2.7×10⁸。

時間: 2 分 見せ方:右の列は図の下に式が替わる。③ の 1 行目でもとの分子の行に橙 1.0・灰 2.3 が入る。答えで図が完成版に替わったら、棒の長さが 1/τ、橙の割合が Φ_F と言ってから指す。改変体 1 と 2 は橙の割合が同じ(Φ_F 0.60)でも、改変体 1 は灰(k_nr)が縮んで棒が短く(τ 長い)、改変体 2 は橙(k_r)が伸びて棒が長い(τ 短い)。 言うこと:もとの分子と比べて、改変体 1 は k_r が同じで k_nr が 2.3 → 0.67 に下がった。改変体 2 は k_r が 4 倍で、k_nr は 2.3 → 2.7 とほぼ同じ。 つまずき所:改変体 2 で「k_nr が減った」を選んだ学生には、τ が短くなったことを指す(k_nr が減れば τ は長くなる)。 言うこと:聞かれたら、「吸収も増えたのでは」には、吸収した光の量は Φ_F と τ を変えない、と答える(c はどちらでもない)。

時間: 2 分 見せ方:右の列は動く式。② で比例の式、③ で「1.0 → 4.0 なら面積 × 4」が出る。② で「面積が k_r に比例するなら、改変体 2 の帯は何倍か」と聞く。答えで、改変体 2 の予想(橙の破線、面積が約 4 倍)が入った完成版に替わる。 言うこと:答えのあとで:測った帯が橙に近ければ(約 4 倍なら)k_r の増加と合う。もとの分子と変わらなければ、光を出す状態そのもの(吸収する状態と別か)が変わったと考える。 言うこと:③ 寿命は二つとも測ってあり、もう一度測っても k_r が増えた理由は分からない。粘度を変える測定は、k_nr のどの過程かを見分けるためのもの。 言うこと:測るものと分かるもの:吸収帯の面積 → k_r、Φ_F と τ → k_r と k_nr、粘度・温度を変えたときの Φ_F → ねじれ、重水素化したときの Φ_F → 内部転換。どれから測るかは第 9 回の事例 I で考える。

時間: 2 分 言うこと:冒頭の予想の答え合わせ。下の枠が出てくる光子の数(同じ濃度・同じ光)。 見せ方:左から:吸収の弱い色素は 100 個吸収して 60 個。吸収の強い色素は 500 個吸収して 25 個で、約 0.4 倍の明るさ。破線の枠:仮に吸収の強い色素の k_nr が吸収の弱い色素と同じ 0.67×10⁸ s⁻¹ なら、Φ_F = 5.0/5.67 = 0.88 で 441 個(約 7 倍)。 言うこと:だから 1(必ず明るい)でも 2(必ず暗い)でもなく、3。 言うこと:3 つ目の箇条:二つの色素は発光の位置が同じなので、エネルギーギャップ則では説明できない。残る候補(ねじれ・項間交差・消光)のどれかは、粘度・温度・重水素化・三重項の測定で確かめる(演習 B の問 2 と同じ考え方)。 つまずき所:1 を選んだ人が多ければ、「よく吸収する分子は、よく光るか」のスライドに戻る。

時間: 2 分 見せ方:図を左から指す:吸収のあと S₁ の極小へ緩和してから光る(発光は吸収より 2λ 低い)→ Φ_F は k_r と k_nr の競争(よく吸収すれば k_r は大きいが、k_nr しだい。Φ_F の増加を k_r の増加と読まない)→ k_nr を速くするもの(ねじれ、差が小さい、項間交差・消光)。差が小さいときは形をほとんど変えずに差を振動に渡し、ねじれでは形が大きく変わって二つの面が近づく所で S₀ に戻る。どちらも k_nr に入る。下の 2 行が問い 1 の答えと、明るさの式。

時間: 1 分 言うこと:表の節と発展の箱は、自習で読む所。中身は小テストの範囲外(表の下の一行)。

時間: 1 分 見せ方:図は次回の問いのスライドと同じ。 言うこと:次回は、触媒がいくつかの状態(空いた状態・基質と結合した状態・中間体)に分かれていて、観測される速度が分布とそこからの速度定数で決まることを見る。今日の「一つの状態から出る過程の競争」を触媒の状態に広げる。第 2 回の存在比、第 4 回の「遷移状態の差」を使う。

言うこと:本編では前提が保たれる場合だけを扱ったので、崩れる場合をこの表で見る。時間があれば使う。 言うこと:k_r = Φ_F/τ を使うときの前提:S₁ をつくる効率 η、多成分の寿命を平均して代入しないこと。

言うこと:吸収の弱い色素:ε の極大 20,000 M⁻¹cm⁻¹、半値幅 2000 cm⁻¹ のガウス形で ∫ε dν̃ = 1.064 × 20,000 × 2000 = 4.3×10⁷ M⁻¹cm⁻²。2.88×10⁻⁹ × 1.96 × (2.2×10⁴)² × 4.3×10⁷ = 1.2×10⁸ s⁻¹。吸収の強い色素は 5.8×10⁸ s⁻¹。本編の値(1.0×10⁸ と 5.0×10⁸)と合う程度。 言うこと:聞かれたら、正確な式では ν̃² ∫ε dν̃ の代わりに ⟨ν̃_f⁻³⟩⁻¹ ∫ε dν̃/ν̃ を使う(⟨ν̃_f⁻³⟩ は発光スペクトルで平均した ν̃⁻³。縮退の比も入る。教科書で読む)。

見せ方:左は S₀(青)と S₁(橙)、同じ曲率の模式。墨の短い幅 2 本が λ。右は吸収と発光のエネルギー、その差(ストークスシフト)、スペクトルの位置。 見せ方:つまみの操作の順:① d = 0.4:吸収 466 nm、発光 530 nm、差 0.32 eV ②「ずれ 0」:吸収と発光が同じ位置(形が変わらない分子。ストリックラー・バーグの前提)③ d = 0.7:差 0.98 eV、吸収 415 nm、発光約 620 nm ④ d = 0.4 に戻す。

言うこと:k_r 1 → 4、k_nr 2 のまま:Φ_F = 4/6 = 0.67、τ = 1/(6×10⁸ s⁻¹) = 1.7 ns。k_r は吸収帯の面積に比例するので(ストリックラー・バーグ)、同じ濃度なら吸収も 4 倍で、150 個が 600 個になる。 見せ方:このスライドだけ印 1 つが光子 10 個(p.21 は 5 個)。 言うこと:明るさが同じ 2 倍でも、k_nr を減らすと τ は長く、k_r を増やすと τ は短い。τ で見分けられる。