タンパク質やウイルスは、原子のレベルではたえず揺れ動いています。その動きが、薬の効き目や病気の進行を左右します。私たちは分子動力学(MD)シミュレーションと、分子どうしの結びつきの強さを見積もる自由エネルギー計算を組み合わせて、生体分子がどう動き、どう相互作用するのかを数値でとらえます。実験だけでは見えにくいミクロなしくみを、計算で明らかにしています。
薬が効かなくなるしくみ
インフルエンザやエイズの治療薬は、ウイルスのタンパク質に結合して、その働きを止めます。ところがウイルスは変異して、薬から逃げることがある。この薬剤耐性が分子のレベルでどう起きるのかを、北海道大学 人獣共通感染症国際共同研究所と共同で調べています。薬とタンパク質の結合の強さを自由エネルギー計算で見積もり、ひとつの変異が結合をどれだけ弱めるのかを確かめます。
神経の病気を分子から見る
筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関係するタンパク質のひとつSOD1は、銅と亜鉛をもつ酵素です。銅は反応の中心を、亜鉛は構造の安定を担っています。ところが、この金属のまわりが乱れると、タンパク質は正しく折りたためず固まってしまう。それが発症に関わると考えられています。金属周辺の状態をレーザー分光で調べる東北大学大学院薬学研究科(中林孝和先生)の実験と組み合わせ、私たちは測定の背後にある構造変化を計算で描きます。
生命の起源に触れる
酵素は、生命の化学反応を支える触媒です。その酵素が、進化のなかでどのように機能を獲得してきたのか。反応の途中のエネルギーを量子化学計算と組み合わせて追うことで、生命の化学的な起源に分子の側から迫ります。この研究は、千葉工業大学 生命科学科の先生たちと一緒に進めています。
こんな人に
生命現象や医療・医薬品に関心がある人はもちろん、進化のなぞを分子から解いてみたい人にもおすすめのテーマです。
次のチーム
⚙️化学工学チーム
機能性材料を分子から設計する