計算化学とは
コンピュータで分子を計算し、その性質やふるまいを予測する化学。高校生・受験生のみなさんに向けて紹介します。
化学は好きだけれど、実験より理屈を考えるほうが得意。
そんな人に向いている分野です。
計算化学は、物理や数学を武器に、化学の問題をコンピュータで解いていく分野です。 右のキャラクターは、この分野を人の姿にした「双子の計算術士」。兄のテオと妹のテラが、計算化学の2つの方向性を表しています。 衣装や持ち物には、化学のモチーフがたくさん隠れています。

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Q.実験をしない化学って、どういうこと?
高校の化学実験では、薬品を混ぜて色や熱の変化を観察します。計算化学は、その分子のふるまいをコンピュータで計算して調べる分野です。原子や電子の運動は物理の方程式にしたがうので、その方程式をコンピュータで解けば、分子の形やエネルギー、反応の進み方を予測できます。フラスコの代わりに方程式を使う化学、と考えてください。
Q.なぜ実験ではなく計算で調べるの?
分子は非常に小さく、反応は一瞬で終わるため、実験装置で直接観察するのが難しい現象がたくさんあります。計算なら、反応の途中で電子がどう動くか、タンパク質が水の中でどう変形するかを、一コマずつ追いかけられます。作りたい材料を実際に合成する前に性質を予測できるので、実験の指針にもなります。
Q.物理や数学、プログラミングはどのくらい必要?
土台になるのは高校で学ぶ物理と化学、そして数学です。とはいえ、方程式を手で解くわけではなく、解くのはコンピュータの仕事です。プログラミングは配属後に基礎から練習できるので、入学時点での経験は問いません。大切なのは、身のまわりの現象を「なぜそうなるのか」と考える姿勢です。
反応のエネルギー地形
高校化学で、反応が進むには活性化エネルギーという山を越える必要がある、と習います。 計算化学では、この山の高さや形を方程式から実際に計算できます。山の低い経路を見つけられれば、 反応を速くする触媒の設計にもつながります。
さわってみよう:分子のうごき
下の箱の中では、約90個の分子が、本物の分子動力学と同じ計算(ニュートンの運動方程式+分子どうしの引力・反発)でリアルタイムに動いています。 温度を上げると分子は激しく飛び回り(気体)、下げるとお互いの引力で集まりだし(液体)、いちばん低くすると規則正しく並びます(結晶)。 色は分子の速さです(青=遅い、ローズ=速い)。
温度スライダーを動かすと、気体→液体→結晶と姿が変わります。
温度をいちばん低くして、しばらく待ってみてください。分子が六角形に並びはじめます。氷や結晶ができるしくみと同じです。
この研究室の研究テーマ
山本研究室では、3つのチームがそれぞれのテーマに取り組んでいます。医療や環境、エレクトロニクスなど、身近な課題にもつながっています。カードをクリックすると、各チームの紹介を読めます。
生物物理
ウイルスと薬の結合を読み解く→
インフルエンザの治療薬は、ウイルスのタンパク質の特定の場所に結合して働きを止めます。薬とタンパク質の結合の強さを計算で見積もり、ウイルスが変異して薬が効かなくなるしくみ(薬剤耐性)を分子のレベルで調べます。
化学工学
二酸化炭素を分離する材料を設計する→
無数の小さな穴をもつ多孔質材料を使うと、気体の混合物から二酸化炭素だけを取り出せます。どんな構造の穴がよく吸着するかを計算で比較し、温暖化対策につながる材料を、合成の前に絞り込みます。
光化学
光る分子の発光メカニズムを解明する→
光を吸収した分子は、電子が高いエネルギーの状態(励起状態)に移ります。この励起状態を精密に計算することで、分子がどんな色で光るかを予測し、有機ELや医療診断に使える新しい発光材料の開発につなげます。
計算化学の、2つの方向性
ひとくちに計算化学といっても、扱う手法や対象で個性が分かれます。マスコットの兄妹が、その2つを表しています。

兄・テオ(量子化学)
ひとつの分子と深く向き合い、電子のふるまいから性質を精密に解き明かします。物理や数学を使って原理から理解したい人に向いています。

妹・テラ(分子動力学・機械学習)
多数の分子が動くようすを追ったり、大量のデータから規則を見つけたりします。シミュレーションやAI、データ解析に関心がある人に向いています。
もっと知りたくなったら
オープンキャンパスや体験プログラムで、実際に計算化学にふれることができます。

