分子が光を吸収したり放出したりするとき、電子は高いエネルギーの状態、励起状態へと移ります。この励起状態を高精度な量子化学計算で解き明かし、光機能性材料や光反応のしくみに迫るチームです。目で見える発光や色の裏側で、電子に何が起きているのかを計算で追います。
集まると強く光る分子
ふつう、分子はたくさん集まると発光が弱まります。ところが逆に、集まったときに強く光る分子がある。凝集誘起発光(AIE)と呼ばれるこの現象は、高い発光効率をもつ有機ELや太陽電池の材料として期待されています。私たちは量子化学計算で、この発光がどんな電子の動きから生まれるのかを解明しています。
病気を光で見つける
AIEは医療にも応用できます。アルツハイマー病やパーキンソン病の原因とされるタンパク質の異常な凝集を、発光でとらえる技術につながるからです。また、ホタルが光るしくみ(生物発光)を応用して、体の奥深くのがん細胞を検出する新しい技術の研究にも取り組んでいます。体の奥を観察するには、組織に吸収されにくい長波長(赤色側)の光が有利です。ただし発光を赤くすると明るさが落ちることがあり、その原因はよく分かっていません。色と明るさを両立する発光系の設計指針を、計算から探ります。
ホタルはなぜ黄緑色に光るのか
ホタルの光は、発光基質ルシフェリンが酵素ルシフェラーゼの働きで反応して生まれます。その色(ゲンジボタルで約562 nmの黄緑)を決めるのは、酵素を構成するアミノ酸の配置や、そのまわりの電場のわずかな違いです。この色を調節する要因を、発光分子とタンパク質環境をあわせて計算で解き明かします。
恐竜時代のホタルは何色だったか
ホタルのルシフェラーゼは、もとは脂肪酸を扱う酵素から進化したと考えられています。中部大学(大場裕一先生)は、現生のホタルの遺伝子から祖先の配列を復元し、約1億年前のホタルが深い緑色に光っていたことを示しました。祖先型と現在のタンパク質を計算で比べれば、どのアミノ酸の変化が発光の色と機能を生んだのか、新しいタンパク質機能が生まれるしくみに迫れます。
こんな人に
光と分子の世界に関心がある人、機能性材料やエレクトロニクスに興味がある人から、量子化学を突き詰めたい人まで、幅広く楽しめるテーマです。
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🧬生物物理チーム
生体分子の動きを計算で追う