TEXTBOOK
量子化学 1
応用化学・材料・工学系の学生に向けた量子化学の教科書の第 1 巻『原子・分子の電子構造』(第 1〜8 章)です。全文を PDF で無償公開しています。
第 0.28.1 版 ・ 2026年10月25日
量子化学 1原子・分子の電子構造
山本 典史 著 ・ A4 判 318 ページ
千葉工業大学 応用化学科の講義「量子化学1」のために書いている教科書です。講義に合わせて改訂を続けていて、この場所にはいつも最新の版を置きます。続く第 2 巻(量子化学2、第 9〜14 章)は準備中です。
どんな本か
「なぜこの分子はこの色なのか」「なぜこの結合は強いのか」「なぜ反応はこう進むのか」。こうした問いの底には、いつも分子のなかの電子がいます。電子のふるまいを暗記ではなく仕組みから理解し、手元の計算で予測できるようになることが、この本の目標です。数学的な形式の厳密さよりも、分子や材料について何が言えるかを重んじて書いています。
解ける模型から、一段ずつ
箱の中の粒子と調和振動子から始めて、原子軌道、多電子原子、化学結合、変分法、分子軌道、ヒュッケル法へ。近似を一段ずつ足しながら、現実の分子に近づきます。
実測と並べて確かめる
スペクトルの線、分子の振動、イオン化エネルギー、結合の長さ。理論で出した値を実測の値と並べ、近似がどこまで当たるかを確かめます。
図と数式の両輪
軌道の形や準位の並びをまず図でつかみ、その直感を式で確かめます。概念図と、数値から起こしたデータ図をあわせて約 130 点。
途中式を省かない
主要な結果は本文で導出を追い、例題は途中式まで示します。章末問題と総合演習には、巻末に略解を付けました。数学の道具は付録にまとめています。
図の見本
目次
第 I 部
原子・分子の電子構造
- 1量子論とシュレディンガー方程式
- 2箱の中の粒子と調和振動子
- 3原子軌道と確率密度
- 4多電子原子とスピン
- 5化学結合と LCAO 近似
- 6変分法と永年方程式
- 7二原子分子の MO ダイアグラム
- 8ヒュッケル法
講義スライド:量子化学1
第 I 部の終わりに、まとめと総合演習があります。巻末には、付録 A(数学的準備)、付録 B(記号・物理定数一覧)、演習問題の解答、参考文献、索引を収めています。第 II 部「共役π系の反応・物性・設計」(第 9〜14 章)は、第 2 巻として準備中です。
利用について
- 学習と教育のために、どなたでも無償で閲覧・ダウンロード・印刷できます。
- 授業や勉強会で紹介するときは、PDF のファイルを配らずに、このページ(https://yamlab.jp/books/qc1/)を案内してください。改訂を続けているので、読む人がいつも最新の版にたどり着けます。
- 著作権は著者が保有しています。著者の許可なく、再配布・転載・改変・販売することはできません(著作権法が認める引用を除きます)。
- 引用するときは、版番号を添えてください。
- 誤りや説明の不足を見つけたら、こちらからお知らせください。次の版で直します。
改訂履歴
全 34 件
- 0.28.1 ・ 2026-10-25
- 公開ページの URL を https://yamlab.jp/books/qc1/ に改め(授業の URL と同じ符号に。全文 PDF は /books/qc1/quantum-chemistry-1.pdf)、奥付の案内を更新。
- 0.28.0 ・ 2026-10-20
- 第 5 章 §5.4 に、重なり積分 S・クーロン積分 α・共鳴積分 β が何を足し合わせ、エネルギーの図で何を決めるかを描いた図を追加。
- 0.27.0 ・ 2026-10-20
- 第 5 章 §5.1 に、H₂⁺ の結合の谷を段階に分けて積み上げる図を追加し、結合のきっかけは運動エネルギーの低下、谷を深くするのは波が縮んで核に寄るときの静電引力、と説明を改めた。
- 0.26.0 ・ 2026-10-20
- 第 5 章の図を差し替え・追加(H₂⁺ で静電引力だけでは結合できないことの確かめ、箱が広がる図、傾きの図、ビリアル定理の精密な図、曲線で描いた結合性・反結合性軌道、係数のベクトルの図)。第 6 章に、永年方程式を導く図、係数の比と規格化の図、E₊ が α より下に来る条件、ヘリウムの SCF の模型を追加。第 4 章で軌道近似に「一電子近似」を併記。
- 0.25.1 ・ 2026-10-13
- 第 4 章 §4.4 の原子の広がりの式で、n が価電子の主量子数であることを明記した。
- 0.25.0 ・ 2026-10-13
- 第 4 章 §4.3 に、3d に電子が入ると 3d が 4s より低くなる理由を、スレーター則で数えて図で示す発展の箱を追加した(図 4-17)。
- 0.24.0 ・ 2026-10-13
- 第 1〜8 章に講義スライドの図と説明を取り入れ、図の追加・差し替え、説明の言い直し、章末問題の追加(各章 2 問)を行った。第 6 章は変分原理から永年方程式の使い方までの流れを組み直し、永年方程式の導き方を発展の箱へ移した。第 2 章の赤外吸収の表の力の定数を、実測の振動数から求めた値に改めた。
- 0.23.0 ・ 2026-10-08
- 全章で、導き方・別の見方・数での確かめ・一歩先の話を「発展」の箱にまとめ、本文と分けた(発展の箱は試験の範囲外)。第 4 章に、軌道の積と電子相関、パウリの原理とフントの規則の理由(いずれも発展)、2s と 2p が分かれる理由の図、シュテルン・ゲルラッハの実験の説明、フントの規則の実測値などを追加。
- 0.22.0 ・ 2026-10-06
- 第 1 章 §1.1 に、光子 1 個のエネルギーと仕事関数を比べて、光を強くしても電子が出ない理由を示す図を追加。§1.3 の確率密度の図を、同じ幅の区間でも確率(面積)が違うことが読める形に改めた。
- 0.21.0 ・ 2026-10-06
- 第 3 章で、p 軌道の形をダンベル形と呼び、ローブを定義した。節が球面と核を通る面だけになる理由、P(r) と高校の電子殻の関係の説明を追加し、節の種類と曲線を色で区別する図に改めた。実数の軌道の磁気量子数を |m| で示すようにした。
- 0.20.0 ・ 2026-10-05
- 第 3 章に、角運動量の z 成分 L_z = mħ の導き方、量子数の範囲(l ≤ n − 1、|m| ≤ l)を節の数で説明する小見出しと図、節の線を引いた球をふくらませて軌道の形を示す図、磁気量子数 m の違い(真上から見た符号の区画、ローブの向き、±m の関係)の説明と図、軌道の絵ができるまでの図、点の雲を球殻ごとに数えて動径分布関数を得る図、P(r) と |ψ|² の違いのよくある誤解を追加。章末問題(概念確認)を 2 問追加。
- 0.19.0 ・ 2026-10-05
- 第 2 章 §2.1・§2.2 に、境界条件の理由、運動量のばらつきの意味、波動関数の幅と運動エネルギーの下限(第 5 章の化学結合への伏線)、古典との対比などの説明を追加。
- 0.18.9 ・ 2026-09-29
- 第 2 章 §2.2 に、波長の違う波を重ねて塊(波束)ができる様子の図と説明を追加。
- 0.18.8 ・ 2026-09-29
- 第 1 章 §1.1 に、光電効果の結果から光を粒とみなす理由をたどる段落を追加。§1.3 の二重スリット実験を、粒と波の予想から結果へ進む形に改め、図を 2 点追加。
- 0.18.7 ・ 2026-09-29
- 第 1 章 §1.3 に、運動量を演算子 −iħ d/dx に置き換える約束を補足。
- 0.18.6 ・ 2026-09-29
- 第 1 章 §1.3 に、電子の二重スリット実験の装置図を追加。
- 0.18.5 ・ 2026-09-29
- 第 2 章 §2.2 に、零点エネルギーを電子と陽子で比べる段落を追加。
- 0.18.4 ・ 2026-09-29
- 第 2 章 §2.2 に、不確定性原理で原子の大きさを見積もり、電子が核に落ちない理由を示す段落と図を追加。
- 0.18.3 ・ 2026-09-29
- 第 2 章 §2.2 に、零点エネルギーが残る理由を波の曲がり具合で見る段落と図を追加。
- 0.18.2 ・ 2026-09-29
- 第 2 章 §2.1 に、左の壁の境界条件(sin は 0、cos は 1)の図を追加。
- 0.18.1 ・ 2026-09-29
- 巻頭の講義回との対応表を更新(調和振動子と分子振動・赤外吸収の 2.3〜2.4 節を第 5 回で扱う分け方に)。
- 0.18.0 ・ 2026-09-29
- 第 2 章 §2.2 に、零点エネルギーの図解(n = 0 と n = 1、準位図)と、箱の最低状態の運動量の分布の図を追加し、平均の運動量は 0 でも運動量の 2 乗の平均が 0 にならないことを補足。巻頭の講義回との対応表を更新。
- 0.17.0 ・ 2026-09-29
- 第 1 章 §1.3 に、弦の揺れと波動関数の対応の図と、確率密度が波動関数の二乗になる理由の説明(光の明るさと光子の数、二重スリットの図)を追加し、波動関数と確率密度の図を定在波の形に差し替え。
- 0.16.0 ・ 2026-09-29
- 第 1 章 §1.1 に、光電効果の実験の模式図とエネルギーの物差しの図を追加し、光電効果のグラフを、光を波と考えたときの予想と実験の結果を並べた 2 枚組に差し替え。
- 0.15.1 ・ 2026-09-29
- 第 1 章 §1.1 の光電効果に、光を波と考えたときの予想と実験の食い違いを補足。巻頭の講義回との対応表を、シュレディンガー方程式を第 2 回で扱う分け方に更新。
- 0.15.0 ・ 2026-09-29
- 第 2 章 §2.4 に赤外スペクトルの模式図を追加。第 12 章に、シアニン色素の鎖と自由電子模型の箱の図を追加し、発色団の図 (a) で箱の長さ L = (p + 1)ℓ の描き方の誤りを修正。
- 0.14.0 ・ 2026-09-28
- 第 1 章に炎色反応の写真、第 2 章に量子ドットの発光と量子コラル(閉じ込めた電子の定在波)の写真、第 7 章に液体酸素が磁石に引き寄せられる写真を追加。
- 0.13.0 ・ 2026-09-28
- 第 1 章の定在波の見通しに、閉じ込めた波が跳ね返った波と重なって整数倍だけが残る理由を補足。第 2 章に量子ドットから一次元の箱への置き換えの図、結合の谷の図、箱と調和振動子の準位の並びを比べる図、代表的な結合の赤外吸収の位置の表と図を追加。「箱の中の粒子」と呼ぶ理由を補足。
- 0.12.1 ・ 2026-09-24
- 第 3 章に縮重の定義(第 2 章)への参照を補足。第 5 章の局在・非局在の波の図から英語の凡例を削除。巻頭の講義回との対応表を更新。
- 0.12.0 ・ 2026-09-22
- 第 1 章に「電子雲」の絵の描かれ方(図 1-7)を追加。§1.1 に光が波であることの説明、§1.1 末尾と章のまとめに「光は波のはずが粒でもあり、電子は粒のはずが波でもある。その両方を扱う新しい力学が量子力学」という本章の筋道を明記。位置エネルギー・回折の言い添えなど表現を補足。
- 0.11.0 ・ 2026-09-22
- 第 1 章 §1.2 に、電子が波として振る舞う証拠として、金箔の電子回折写真(図 1-5)を追加。
- 0.10.0 ・ 2026-09-21
- 第 8 章にヘテロ原子を含む π 系の節と例題(C=N)を追加。第 1 章の光電効果、第 5 章の反結合性軌道、第 7 章の σ 骨格と π 系の分離の説明を補足。第 2 章・第 6 章・第 11 章の表現を修正。
- 0.9.1 ・ 2026-09-21
- 第 1 章 §1.1 に、線スペクトルの説明として電子の励起の記述を追加。第 2 章の縮重が解ける説明、第 6 章の変分原理の説明(エネルギーの低い試行関数ほど基底状態エネルギーの良い近似)、第 11 章の反応点の説明の表現を修正。
- 0.9.0 ・ 2026-09-21
- 全 14 章の初稿を公開。
